青葉優一 『繰り返されるタイムリープの果てに、きみの瞳に映る人は』

内容(「BOOK」データベースより)

「あなたは運命の人じゃなかった」順風満帆かと思われた慶介と亜子の関係。しかし亜子は突然に別れを告げた。驚きと悲しみに打ちひしがれた慶介に、タイムリープというチャンスが与えられる。時を遡った慶介は、別れの原因となった行動や欠点を改めていく。その先に待つのは幸せか、それとも―。繰り返されるタイムリープの果てに、慶介と亜子、二人が辿り着く真相と結末とは?感動うずまくファンタジー・ラブストーリー。

※ネタバレ有りです。

3月下旬、喫茶店で待ち合わせた恋人・亜子から一方的な別れを告げられた主人公・慶介。
失意のままに店を出た後、迫る暴走トラックの前で轢かれそうになった幼い少女を見つけて助け出そうとするも、慶介自身は強い衝撃を受けて気を失います。
目覚めた時、違和感を抱いて日付を確かめると、前の年の大晦日であることがわかり、過去を遡ったことを知ります。
なぜだか、右手には傷痕が。
当然のことながらその時点では亜子とも別れてなく仲良い恋人同士のまま。
せっかく巡ってきたチャンスなので、慶介は最愛の彼女との破局を防ぐべく、過去とは違う行動を取ります。
しかし、迎えた運命の日、まったく同じ場面で別れを告げられてしまうのです。
違っていたのは嫌いになった理由だけで、慶介の行動がことごとく裏目に出ていました。
ただし、最後に会った2週間前まで二人は熱々に過ごしていたわけで。
徐々に嫌いになっていたという亜子の言い分はとうてい納得できません。
そこで同じ行動を取って2回目のタイムリープを果たした慶介は会えなかった2週間の間、亜子に何か問題が起こったのではないかと思い、興信所を雇って1月以降の亜子の行動を探ることにしました。
その結果、1月の土曜日*1は亜子が同じ会社の男女4人で何度も遊びに行っていたことを知ります。そのうちの一人の男が亜子と親しげに振舞っている様子も。
慶介は浮気を疑ってしまいそうなりましたが、2月以降の亜子の行動は消極的になり、別れる前には病院に行っていたことが判明。
そこから慶介は亜子が不治の難病に冒されたことで、慶介を関わらせないようあえて別れを選んだのだと予想するのですが……。


偶然のタイムリープをきっかけに恋人との別れ、そこに生じた謎を解くべく、3か月弱のタイムリープを繰り返す内容です。
失敗を挽回すべく行動するも、結果が変わらないとすると、本当の理由はまったく別の視点から見なければいけないのではないか。
そこから見えてくる亜子に降りかかる災難。
やりなおす度に新たな障害が立ちはだかり、謎が謎を呼ぶ展開もあって、徐々に物語に惹き込まれていきました。
しかもタイムリープには代償が必要であり、始めこそ右手の小さな傷でしたが繰り返すごとに大きく目立つようになっていくという設定が斬新ですね。

最終的に慶介が選んだのは自身の命を犠牲に亜子を救うこと。
その決意こそ尊いですし、感動的なラストへの流れとして必要なのでしょう。
ただし、慶介を喪った亜子の哀しみを思うと、もっと違う選択肢はなかったのかと思いましたね。
その点、自分自身を囮にして二人とも助かる博打(失敗すれば本来の流れより悪い結果を招く)を打った亜子の方が度胸あるなぁと思いましたね。

*1:慶介は仕事がある