9期・34冊目 『死のロングウォーク』

内容(「BOOK」データベースより)
近未来のアメリカ。そこでは選抜された十四歳から十六歳までの少年100人を集めて毎年五月に〈ロングウォーク〉という競技が行われていた。アメリカ・カナダの国境から出発し、コース上をただひたすら南へ歩くだけという単純な競技だ。だが、歩行速度が時速四マイル以下になると警告を受け、一時間に三回以上警告を受けると射殺される。この競技にはゴールはない。最後の一人になるまで、つまり九九人が殺されるまで、昼も夜もなく競技はつづくのだ。体力と精神力の限界と闘いながら、少年たちは一人また一人と脱落し、射殺されていく。彼らは歩きながら、境遇を語り、冗談を交わし、おたがいを励ましあう。この絶望的な極限状況で最後まで生き残るのははたして誰なのか―。死と直面する少年たちの苦闘を描いた、鬼才キングの問題作、ついに登場。

詳しい設定は書かれていないのですが、この世界では第二次世界大戦にて本土までが戦禍に遭ったことが関係しているのか、アメリカは全体主義国家のように描かれています。
主人公・ギャラティの父のように反体制的とされた人物は”分隊”に引っ張られて二度と戻ってこないというように。
各州から選抜された十四歳から十六歳までの少年100人がひたすら歩き続ける〈ロングウォーク〉という競技が毎年行われ、国民の一大娯楽となっているようです。
ただし一定の速度で決められた道路を歩くことが定められ、それを外れると警告を受ける。一時間に三回以上警告を受けると問答無用で射殺されるという過酷な競技でした。*1
ゴールというものは無く、最後の一人となるまで何日もどこまでも歩き続けてゆくというもの。
はっきり書かれてはいないものの、優勝者には莫大な賞金が約束されているようです。


明確に主人公が明示されており、結末は予想できるのですが、やはり〈ロングウォーク〉のそのあまりの過酷ぶりには最後まで気を抜くことはできなかったですね。
休憩は一切無し。水・食料は支給されるので歩きながら摂る。
昼でも夜でも晴れても豪雨でも霧の中でもぶっ通しでただひたすら歩く。
眠くてなっても体調が悪くなっても足がつっても生理現象があっても転んで血が出てても関係無し。
体力・気力の限界を超えたり、思わぬアクシデントに襲われたり、はたまた逃亡や見張りの兵士への逆襲を試みたり。
警告を3回越えた者が次々と射殺されていく中でも歩き続ける参加者の様子が読んでいて辛い。
それでも続きが気になって読まざるを得ないのです。
軽口を叩いたり罵りあったり助け合ったり身の上話をしたり。
少年たちの間には友情も芽生えるのですが、生き残るのはたった一人だけという不条理が何とも言えないですね。
参加者の人間性が豊かに表現されているのに対して、見張り兵士の表情の無さや(参加者身内など一部を除き)観客は完全に娯楽として消費している様子がこの世界の怖さをよく表わしていると感じました。


余談ながら、『バトルロワイヤル』は本作がきっかけになったとか。
ストーリーとしては別物ですが、その奇妙な世界観や不条理な戦いの中で主人公が苦しみもがくあたりは共通していますね。

バトル・ロワイアル

バトル・ロワイアル

*1:二時間経過すると警告回数クリア