9期・59冊目 『ハイスクール・パニック』

バックマン・ブックス〈2〉ハイスクール・パニック (扶桑社ミステリー)

バックマン・ブックス〈2〉ハイスクール・パニック (扶桑社ミステリー)

内容(「BOOK」データベースより)
〈二年前のことだ。そのころから、ぼくのあたまはおかしくなり始めた―〉ぼくの名前はチャーリー・デッカー。プレイサーヴィル・ハイスクールの最上級生だ。ぼくは、代数のアンダーウッド先生と、歴史のヴァンス先生を父のピストルで射殺した。あっという間のできごとだった。しかし、だれもいまおこっていることを信じられない。警官隊がやってきてぼくたちを遠巻きに包囲している。ぼくとクラスメートたちは日常世界から切り離された世界に漂いだした。まるで白日夢のような、しかし緊迫した時間がながれていく。五月のある晴れた一日、教室で一体なにがおこったのか?モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングが高校生の不安定な心の世界を、同世代の視点からあざやかに描いた、異色の青春サスペンス小説。

ハイスクールの問題児チャーリー・デッカーは校長に呼び出されて面談を受けるも、その説教を一蹴。
戻りがてら、銃と弾薬を取り出してロッカーに火を放ち、そのまま教室に入って教師を続けざまに射殺しクラスメイトを人質に立てこもります。
校長や精神科医*1による説得には悪口雑言で返すのみ。
ついに学校に警察が駆けつけるも、人質がいるために手が出せません。
もっともチャーリーは教室のクラスメイトを撃つつもりはなく、奇妙な雰囲気の中でチャーリー主導のホームルームが開かれたのでした。


実際に学校での銃乱射事件が発生したために著者自らの判断で絶版になった作品です。
とはいえ、とち狂った生徒とか外部から侵入してきた人が銃を乱射して無差別に人を殺して・・・という内容でもなし。
パニックとなっているのは周囲の大人のみ。
渦中にある生徒たちはいたって普段通りというか、明らかに事態を面白がっている者さえいるのです。たった一人、優等生のテッド*2を除いて。
一見奇妙にも思えるけど、そんなものなのかもしれない。あのチャーリーがまた変わったことを始めたぞ、くらいな。そう思わせるものがありました。
大人の干渉を排した中で始まったホームルームでは誰もが本音で語り出すようになります。親との葛藤を始めとする人間関係の悩みとか性のこととか。
例えて言うと修学旅行の夜みたいな。そんな独特な雰囲気を感じましたね。
チャーリーのスクールジャック(?)が唐突すぎて、本当に意図していたのかは最後まで確信できなかったですけど。
十代はもうだいぶ昔のことですけど、少しあの頃の気持ち(大人や社会に対する反発とか将来に対する不安とか)を思い出させる作品でした。

*1:今でいうスクールカウンセラー

*2:ホームルームの中では大人の意に沿う裏切り者扱い