9期・26冊目 『タイム・リーパー』

タイム・リーパー (ハヤカワ文庫JA)

タイム・リーパー (ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
平凡な銀行員の森坂徹は仕事で疲れた夏の日の帰り道、恋人の目の前で交通事故に遭った。瀕死の重傷を負った彼を収容したのは、なんと2018年の救急病院。しかも、その怪我のために首から下は機械の身体に換えられていた。彼は30年の時を超え、未来へとタイム・スリップしていたのだ。やがて時間跳躍能力を持つ森坂をめぐり、未来のタイム・パトロールと警察の特殊能力開発部隊との間で、凄絶な戦いが繰り広げられてゆく。

1988年夏、主人公の森坂徹は銀行員としての仕事も充実し、学生以来の恋人・数子もいて平凡ながら幸せな日々を送っていました。
ある日、仕事帰りに数子と約束して待ち合わせの場所へ急ぐあまり、道路を横断した際に交通事故に遭ってしまいます。
そして病室で目が覚めた徹はなんと30年後である2018年の世界にいることを知る。
時空を超えて中川春名という弁護士夫人の乗る自動車の前に忽然と現れ轢かれてしまったのだという。
その時代の先進医療技術により一命を取り留めたものの、首から下は鋼鉄製のボディに替えられてしまっていました。
途方に暮れた徹は関係者に正直に身の上を話すのですが、そのために特殊能力開発組織(KLO)からモルモットとして狙われる羽目になってしまうのです。


タイムスリップによって生じた禁断の恋愛(実は親子だった!)ものかと思ってたら、激しい超能力バトルだったでござるという話。
目の前の年上の美女(春名)が実は徹にとって将来数子との間に生まれるはずの娘であると告げられて、まぁにわかに信じられないのはわかります。
徹は5年後に今度は本当に交通事故に巻き込まれて死ぬ運命にあり、当時2歳だった春名は父の記憶がほとんど残っていないというわけですから。
親子としての実績が無い内に逃避行に巻き込まれ、吊り橋効果というのか二人は次第に惹かれあってしまのです。
30世紀の未来にて、いわばタイムパトロールとして人類の歴史を司る組織・IEOでは突如時間跳躍能力が目覚めた徹をスカウトしにきたわけですが、徹の意図しないタイムスリップのせいか2018年あたりの歴史の流れがぐちゃぐちゃになるわ、KLOと激しいバトルが勃発するわで大変。
ということなんだなーと読み取れるわけですが、脈絡もなく登場するエスパーたち、頻繁に切り替わる人物視点、特に女性人物の感情というか台詞の唐突さについていけず、どうにも読みづらかったです。
終盤は激しい戦いの後、切なさを残してうまく締めくくられたと思いますが。


むしろ1988年から見た30年後の東京を様子を、4年しか変わらない2014年の今と比べてみるのが興味深かったですね。
追われる身である徹の目線のせいか、絶大な権力を持つKLOや警察による管理社会はある意味ディストピアとして怖いですし、都市としての変貌や技術の進歩に関してはいき過ぎている部分もれば近いなと思われる部分もありました。
それはともかく、娘が人生がより良いものであるようにと願う親の気持ちはよくわかりますね。
大人になった娘が不幸になってしまうのを目のあたりにして、予め忠告を与えておくのはタイムスリップものならでは。歴史が変わってしまうのを可とするならですけど。