- 作者: 田中芳樹,荻野目悠樹,久織ちまき
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/06/07
- メディア: 文庫
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- 作者: 田中芳樹,荻野目悠樹,久織ちまき
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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6巻
内容(「BOOK」データベースより)
「宙峡」崩壊の危機を、直前で阻止したエレオノーラ。その結果、傷ついたコンラットを前にエレオノーラの心は揺れる。父への父讐心と野心を捨て、生きる道もあるかもしれない…。だが彼女は謀略により、反ボスポラス勢力の象徴として祭り上げられてしまう。それは、父であるオルヴィエート国家元首・レオポルトにとっては裏切りに等しい行為。実の娘に向け、レオポルトはついに刺客を放つ!激動する歴史はエレオノーラを、そして銀河宇宙を何処へと導くのか?大人気スペースオペラ、新章ついに開幕。
前巻にて、宙峡崩壊の危機を救ったものの、その代償として重傷を負ったコンラット。要塞周辺にの力は狂い、乗艦ラオコーンは損傷を負い、要塞から出るに出られず。
更に連合軍によって本人の意思とは関係なく反ボスポラス勢力の象徴として祭り上げられ、実態は要塞内で厳しく監視されたまま体よい軟禁状態。新章はエレオノーラにとって思わしくない事態のまま進みます。
雇った側と雇われた側という関係を超えて、初めてコンラットへの想いを見せたかのようなエレオノーラの姿が珍しく描かれましたね。コンラットへの見舞いで不器用ながら自ら切った果物を持っていくところがいじましい。監視者の邪魔さえなければもっといいシーンができたかも?
そのまま復讐と野心を捨て別の道に進むという選択肢が見られたところで、父からの容赦ない一撃がぶちこわしにしてしまうのです。ベアトリーチェが文字通り体を張って暗殺者の攻撃を防ぐことに成功したのですが、瀕死の重傷を負ってしまったのが読んでいる側としてもショック。結局それが引き金となって父との対決は避けようが無いと決心させることになるんですねぇ。
この巻ではエレオノーラだけでなく間一髪テロを避けられたジェラルド、密かに亀裂を見せるポスポラスの将帥たち*1、物語としてはあまり進展はないものの、いっぺんにキナ臭くなってそれが次巻で怒涛の展開を見せるのかなと予想。とにかく陰謀と危機が満載のスリリングな内容でした。
あと、完璧にエレオノーラを追い詰めたかと思いきや、コンラットらの活躍によってまたもや失敗に帰した「毒蛇」ことラ・ガーラにはその生い立ちも含めて同情を禁じえませんね。*2
7巻
内容(「BOOK」データベースより)
殺された母親のために。命を失いかけた友のために。ついに父レオポルトとの戦いを決意するエレオノーラ。だが、経済大国オルヴィエートの国家元首として君臨する父を倒すために、エレオノーラが持っているのは莫大な資産のみ。小国の国家予算を超える“金”を武器に、エレオノーラが銀河市場に張り巡らせた罠は、父レオポルトのみならず、オルヴィエート、そして全銀河宇宙を震撼させる…。空前のスケールで描かれる父と娘の対決劇!田中芳樹&荻野目悠樹が贈る大人気スペースオペラ、疾風怒涛の第7弾。
陰謀渦巻く前巻を静とすれば、ついに父娘の相克に決着をつけた今回は動とも言える怒涛の展開を見せます。
物理的な戦力をほとんど持たないエレオノーラが駆使するのは国家予算をも凌駕するほどの膨大な資金。それが父レオポルトを象徴する経済大国オルヴィエートに牙を剥く。
「壮大な親子喧嘩だ」とは作中の台詞ですが、実際にオルヴィエートの名門豪商や内戦中の陣営までも引き込み、その行く末によっては宇宙の覇権にも影響するほどです。
派手なドンパチは無くとも情報とマネーと駆使した相場をめぐる駆け引きには手に汗を握るほどでした。
そしてついに遂に勝者の立場に立ったエレオノーラですが、兄と親友は去り、母の死については謎ばかり残り、父をも凌ぐ実権を握ったとは言え、晴れがましい心境とは程遠いことが伝わってきますね。*3
にしても、父娘の経済戦争がメインとはいえ、それにジェラルドとベアトリーチェがなんら影響を及ぼすことなかったのがちょっと気になりましたね(まぁエレオノーラの差し金でもあるんですが)。確かに情に動くこの二人はシビアな経済戦争にはそぐわない面があるゆえ蚊帳の外に置かれてしまったのかもしれないし、今後の展開として決別させる意味があったのかもしれないですが。
船団との接触によって新たな協力者を匂わせるジェラルドに比べ、エレオノーラには独裁者の孤独が既に漂い、そして後の悲劇的なフラグが立ったような気がしてなりません。