56冊目 『後宮小説』

後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)

もともとは「歴史小説を募集した質問」にて寄せられた作品で、その時は求めているものと違うなぁと思って大して興味は持たなかったんです。
でも他の質問で酒見賢一の名を見て興味を持つようになり、手に取った次第です。


国史を全く知らない人が読めば、本当に史実を語っているかのように大真面目に、おそらく中国大陸の王朝をモデルにされたと思われる架空の国家・素乾国の歴史を語っています。
他の地域は実名で出したり、本当に存在したかのように史書や史家まで引用するというご丁寧さ。
でも話の中心となるのが後宮*1のことなんですよね(^^)


「銀河」という田舎娘が、自ら志願して後宮に入るところからストーリーは始まります。
銀河たち多くの女官候補生が、女大学という教育機関で男女の体のことやら房中術やらを体系的に確率された学問として学ぶ期間にかなりの記述がとられています。
後宮というと、研を競う美女達の華々しさがある反面、皇帝の寵を得る為の醜い争いも実際にあったようです。
しかし女大学においては、誰に対しても物怖じしない銀河のキャラをはじめ、無口だけれど中身はすごく大人じみた紅葉、高貴な出自ゆえにプライドが高いがどこか憎めない世沙明、そして教授である角先生などとの会話は、逆にほのぼのとした感じがします。


銀河がなぜか正妃に抜擢されたあたりから一転して、新皇帝をめぐる陰謀や叛乱といった動乱の中での銀河達の活躍、そして後日談で終わるわけですが、希望としては後半部分をもっとボリュームを膨らませた話で読みたかったなぁと思います。
まぁ、作者が銀河および後宮のことを取材し、史書から拾い上げて記述したという形式なんで仕方が無いですかね〜。

*1:日本の江戸時代で言えば「大奥」、イスラムの王国にあった「ハレム」ですね。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%AE%AE