東北楽天ゴールデンイーグルスの2023シーズンを振り返る

オリックスが独走して優勝を決めたのとは裏腹に、最後の最後までもつれたのがクライマックスシリーズの切符を巡る2~3位争い。
楽天イーグルスは最終戦を残して3位まで0.5ゲーム差の4位。10月10日のロッテ戦にて、勝てば3位、負ければ4位となっていました。ついでに勝敗数タイなので、勝てば貯金、負ければ借金となります。
試合結果は今シーズンの悪かったところが出きったかのような完敗で4位が決定しました。
結果的には首位から落ちていって借金2となった昨季と同じ順位なのですが、一年を通してみたら真逆でしたよね。

3~5月は日本ハム、途中から西武も加わってBクラスで最下位争い。6月も5位と6位を行ったり来たりの状態。
なにせ打線の冷え込み具合は半端なかったです。主力がそろって不調。おまけに去年活躍したセットアッパー西口投手が不調だったので、リードを保っていても終盤に逆転される試合が何度もありました。
大型連敗こそないものの、連勝もなく、負けて勝って負けての繰り返し。いつの間にか借金が膨らんで、最大13に達していました。
いくら投高打低とはいえ、打率2割台前半と1割台が占めるスタメン。捕手の打率が一番いい時があったくらいでした。

それが交流戦の頃から打線が復調してきました。ちょうど打撃コーチの配置転換(今江コーチが二軍から一軍へ)も功を奏したようです。
交流戦を五分の成績で収め、7月は8連勝を含む勝ち越しで借金は半分に減り、日本ハムと入れ替わるように4位に上がりました。

ただ、シーズン後半に入ると順位の差が広がっていて、Aクラスへの道は遠かったですね。
8月は五分の成績。9月に入ると調子を取り戻して勝ち越し。さらに上位のソフトバンク・ロッテに負けが込み始めてAクラスに迫ります。このあたりから混戦が始まったと言えましょうか。
イーグルスの借金も返済間近。9月下旬の10連戦で勝ち越して、ようやく10/1に同率2位になりました。長い道のりでした。
このままAクラスを維持できていればよかったのですが、ソフトバンクとのビジター2連戦で連敗したのが痛かったですね。すぐに4位に逆戻り。2年連続でAクラス=CS行きは叶いませんでした。


楽天のチーム成績

2021 2022 2023
順位 3位 4位 4位
得点 532(4位) 533(2位) 513(2位)
失点 507(3位) 522(4位) 556(6位)
得失点差 +25(3位) +11(4位) -43(6位)
打率 .243(3位) .243(3位) .244(3位)
本塁打 108(5位) 101(3位) 104(2位)
盗塁 45(6位) 97(2位) 102(1位)
防御率 3.40(4位) 3.47(6位) 3.52(6位)

シーズン序盤は本塁打と犠打やエラー絡みでしか点が取れず、タイムリーがなかなか出ませんでした。打率はリーグ最低だったのに、よくぞここまで上がったものです。盗塁数もダントツ1位です。
対照的に防御率・失点の多さ。負ける時は投手陣が崩壊して大敗する試合がよくありました。

去年まで苦しめられた左腕に関しては、一部(オリックス・田嶋投手)を除けば、さほど苦しめられた印象はありません。その代わりに西武・今井投手にはまったく勝てませんでした。
直球が強くて荒れ球の投手を苦手としている印象です。四球は取れても、点に繋がりません。
先発は打ち崩せないけど、投手が代った途端に集中打することもありました。ホームでのサヨナラ勝ちが増えたと思います。*1

バントを失敗しているイメージがありましたが、実は犠打125で1位。代打率.253で1位。チャンスに弱いイメージがありましたが、得点圏打率.254で2位。予想通り四球が490で1位、三振数も937で一番少ない。各打者のしぶとさはありました。
一方で守備と投手の指標は悪いです。去年少なかった失策は増えて72(同率4位)。QS率は46.15%で5位でした。
まさに打高投低のチームであったことが現れていますが、打ちまくったというイメージはないんですよね。単打と四球で塁上はにぎわすものの、併殺(108で最多)でチャンスを潰していたせいです。足があるので3塁打は一番多いのに、2塁打は一番少なかったようです。


楽天の各選手について
まずは先発投手陣。一昨年2人、昨年1人だった二桁勝利はついに出ませんでした。
トップは岸投手で9勝5敗・防御率3.07。チーム唯一の完投完封勝利も収めましたし、最年長ながら一番安定しています。10勝を賭けた最後の試合だけは残念でした。
ルーキー時代から長らく活躍を見せている則本投手(8勝8敗・2.61)。防御率はリーグ5位なのですが、最後の試合で見られたようにエラー絡みの失点や援護の少なさ。試合は作るも不運な印象が強かったです。
田中投手(7勝11枚・4.91)は日本復帰3年目で一番悪かったようです。良い時と悪い時が極端でしたね。悪い時はピンチでことごとく打たれたような。
ドラフト1位ルーキーの荘司投手(5勝3敗・3.36)。前半こそ無援護が多くて初勝利が遠かったものの、1年を通じてよく投げ、勝ち越してくれました。気迫のこもったピッチングが印象的でした。
早川投手(6勝7敗・3.44)。前半は良かったものの、コンデションを崩してローテーションを守れませんでした。

ローテーションには入りきれなかった他の先発投手。
辛島投手(1勝5敗・4.56)は大崩れはしないものの、好投手(今井投手とか)と対戦して援護少なく降りる不運さありましたね。
藤平投手(2勝4敗・4.44)、松井友投手(1勝2敗・3.86)は投手高齢化の中でローテ入りを期待しているので、もう少し伸びて欲しい。
藤井投手(3勝0敗・2.29)は先発だけでなく、終盤中継ぎでも良いピッチングが見られました。

中継ぎ・リリーフ。
シーズン序盤は崩壊気味でしたが、後半はだいぶ安定してきました。ただ、酷使が心配です。去年大活躍だった西口、宮森投手は今季コンデションを崩してしまいました。
安樂投手(3勝2敗10H・3.04)、宋投手(2勝1敗16H・2.89)、酒居投手(5勝3敗20H・2.98)はさすがに安定していましたね。鈴木投手(1勝1敗22H1S・3.30)は球は強いけどコントロールが荒れる時があって若干不安定でした。
高卒3年目の内投手(4勝2敗7H・2.28)は飛躍の年となりました。回またぎの救援もこなしてくれました。
なんといっても途中から勝ちパターンの8回を担ったのがドラフト3位ルーキーの渡辺投手(8勝3敗25H1S・2.40)。終盤は打ち込まれてしまう場面がありましたが、ここまで活躍するとは予想外。来年も引き続き活躍できればいいのですが。
守護神・松井裕樹投手(2勝3敗39S・1.57)はWBCで活躍できなかった悔しさを晴らすかのような仕事ぶりでしたね。2年連続最多セーブと最年少で通算200セーブ到達はお見事。ただし、海外FA権取得なので、来季どうなるか気になります。


次いで野手。なんだかんだで主力は打率2割後半に乗せてきました。
スタメン一番が多かった小深田選手(打率.258・5本・37打点)は初の盗塁王に輝きました。阪神戦での最終回逆転3ランが印象的です。守備(送球)がちょっと不安ですが。
シーズン序盤の不調を見事に戻してきたのが4番・浅村選手(.274・26本・78打点)。見事本塁打王に輝きました。長打だけでなく、軽打も巧かくて、チーム打率トップです。
同じく序盤は振るわなくてスタメンを外れることもあった辰己選手(.263・9本・43打点)ですが、後半は去年を想起するような逆方向の打球が増えましたね。
後半は5番が多かった岡島選手(.266・6本・43打点)。逆方向への長打が多く、勝負強さが光りました。
二度のタイトルホルダーながら、今季絶不調で二軍落ちも経験したのが島内選手(.236・7本・38打点)。復帰後は去年までのような巧打を見せてくれました。もともと波があるのはわかっていましたが、前半は本当に打てなかったですからね。
移籍してようやくパリーグの投手に慣れたのか。8月から調子が上がってきた阿部選手(.255・4本・24打点)。打席で粘りがあるし、右方向への打球が増えましたので、来年はもっと打ってくれると思います。

外国人としてはオープン戦や二軍では絶好調だったのに、怪我を繰り返して一軍で出場できなかったギッテンス選手はもう論外ですね。いくら能力があっても、試合に出られないのでは…。
ということでフランコ選手(.221・12本・23打点)一人だけでした。よく言われているようにNPB投手のレベルが上がった中、外国人バッターでホームラン数の最高は15本ですから、まぁ及第点なのかと思います。三塁守備も悪くないし、慣れてくると三振も減りました。ただ、早打ち凡打が多くて。残留か退団かわかりませんが、できれば残留して来年は豪快な打球を見せて欲しい。

そして今季ブレイク組。
小郷選手(.262・10本・49打点)。去年まで一軍ではあまり打席もらえなかったのですが、島内選手不調の中でチャンスを掴み、見事に開花しました。一時期3番を打っていましたが、終盤は8,9番。この成績の選手が下位にいるのは脅威じゃないでしょうか。
長らく守備代走要員だった村林選手(.256・2本・32打点)のブレイクはファンの誰もが予想していませんでした。楽天が欲しがっていた右打者。まさか彼が出てくるなんてね。守備も安定して、ショート争いを勝ち抜きました。

準スタメン、代打要員としては、鈴木選手(.244・5本・27打点)、伊藤選手(.245・5本・16打点)。山崎選手(.203・2本・19打点)は打線が不調だった春先に唯一といっていいほど頑張ってくれましたが、続かなかったのが残念。
二軍で打率3割後半と無双していた渡辺佳明選手は終盤になってようやく一軍に上がりましたが、まったく打てませんでしたね。


*采配・試合運び、その他
去年も書いたように石井GM体制ではFA・トレード・ドラフトによって戦力の底上げはされてきました。客観的に見て、Aクラスを狙えると思います。
ただし、主力選手の多くが30代なので、若手が伸びてこないとジリ貧になりそうです。
石井氏が監督専任となったのは、チームを支えてきたベテランが力を発揮できるうちに優勝をと思ったんじゃないかなと思います。
イーグルスに限った話じゃないですが、オリックスが強すぎて後塵を拝してしまいましたが。

多くの人がいろんなところでコメントしている通り、石井氏は戦力を整えるために手腕を発揮できるのですが、勝負師としては他球団の監督に劣るような気がするんですよね。甘さがあって非情に徹しきれないといういか。大事な試合で何が何でも勝利を掴もうという執念に乏しい。
また、うまくいった作戦(バントによる得点など)をまた試みようとして、相手に読まれてしまう。相手の裏をかくこと。相手が嫌がることをあまりできないタイプなのかもしれません。逆にイーグルスは裏をかかれたり、嫌な相手をぶつけられて苦戦してきました。作戦的にはがゆい思いをしたものです。

また、選手の好不調による入れ替えも滅多にしない。投手はともかく、野手は本当に入れ替えませんでしたよね。シーズン前半に思い切って投手と打撃のコーチの配置転換を行って効果が出ました。選手も不調だったら二軍で調整させ、二軍で好調な選手を上げる。そのあたりをもっと頻繁にやっていたらと思いました。
やはり、ベテランには甘く、若手には見切りが早い。そんな印象でした。

つい先日、石井氏が監督を辞任し、シニアディレクターに就任するとの報道がありました。
【楽天】監督退任の石井一久氏が取締役シニアディレクターに就任 トレード交渉役など編成面でチーム強化が狙い (スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

新たに座るシニアディレクターは、チーム編成面で現場及び球団と連携を取り合い、各方面に様々な助言を送ることに加えて、トレードによる他球団との交渉役や三木谷浩史オーナーと球団との窓口のような役割も担うものとみられる。

石井氏はアンチが多くて、楽天球団から去って欲しいとのコメントもありましたが、私としてこういう形で球団に残ってくれたのはありがたいと思います。
問題は誰が次期監督になるか。本当はかつての野村氏・星野氏のような経験豊富な指揮官を迎え入れて体制を立て直したいところ。しかし、外部招聘は難しそうで、内部昇格、今江打撃コーチが最有力とか。
どうなんでしょうねぇ。打撃コーチとして成果を出しているのは確実。しかし、監督としては未知数です。
個人的には今江打撃コーチ留任で、内部ならば三木二軍監督の方が良い気がします。一年間とはいえ一軍監督経験者ですし。さらに二軍は去年優勝しています。
チームとして育成しつつ勝負をかけていくなら、妥当な人選だと思うのですが。


※順位推移や成績などはこちらを参照しました。
スポーツナビ(YAHOO JAPAN!) https://baseball.yahoo.co.jp/npb/
プロ野球Freak https://baseball-freak.com/chart/0.html
Baseball Data House  https://nf3.sakura.ne.jp/Stats/team_etc.htm

*1:私自身、現地観戦で二度あった。