10期・69冊目 『精霊幻想記2 精霊の祝福』

精霊幻想記 2.精霊の祝福 (HJ文庫)

精霊幻想記 2.精霊の祝福 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
ベルトラム王国を出奔し、両親の故郷である東の地を目指して一人旅をするリオ。その道中、彼は貴族が差し向けてきた暗殺者である狐獣人の奴隷少女ラティーファと戦闘し、これを返り討ちにする。さらにリオは、ラティーファを縛る隷属魔術を解呪するのだが―自由の身になった彼女はひとりぼっちは嫌だと主張し、リオの旅への同行を申し出て!?

前巻にて冤罪により指名手配とされた主人公リオは恩師セリアに別れを告げてベルトラム王国を出奔。両親の故郷である東方のヤグモ地方を目指します。
そしてリオの暗殺指令を受けた獣人の奴隷少女がその後を追うのでした。
ヤグモ地方に至るまでには未開地と呼ばれる広大かつ道なき険しい地域を抜ける必要があり、長旅の準備をために交易都市・アマンドを訪れます。
そこはうら若き公爵令嬢リーゼロッテの経営手腕により急速に発展していた街。
リオは「メン」を使った「パスタ」、それに「肉マンジュウ」という前世を連想させる料理に出会い驚きを覚えます。
それらを開発した令嬢のことが気になりつつも、とりあえず商会にてパスタの乾燥麺を大量に買い込み東に向かいます。
そして街を抜けた直後に暗殺者である狐獣人との戦闘。返り討ちにするも命を奪うことはできず、首輪にかかっていたの隷属魔術を解呪して解き放つ。
そうして再び旅を続けようとするリオですが、暗殺者だった少女ラティーファが後をつけてきて…。


不遇な境遇の連続であった前巻に比べて、今回は出会いと癒しが盛りだくさんの内容と言えましょう。
冒頭だけとはいえ、Web本編では何度も登場してその存在感が光るリーゼロッテ(ただし今回リオの前では一従業員のロッテと名乗る)*1、暗殺者としてリオを追っていた狐獣人の奴隷少女ラティーファ、そして精霊の地で出会うエルフやドワーフ、獣人の面々。
リオが無意識に使っていた精霊術や契約精霊についての記述もあり、ファンタジー成分が溢れていますね。
なにより2巻のヒロインと言えるラティーファは前世で春人と縁があって密かに憧れていた小学生の涼音。春人とバス事故に巻き込まれたのですが、生まれ変わった時点で奴隷として過酷な日々を送っていたというから悲惨です。
命を狙ったにも関わらず首輪を外してもらい、しかも保護者として旅を同行するリオを慕うのも無理からぬ話。
リオに対する熱烈な妹ぶりにはほっこりします。
ただWeb本編で幕間として書かれていた涼音視点での章が大幅に削除されていたのは惜しかったですね。奴隷境遇の不快な部分や重複場面が多分にあったせいかな。その分、リオ(春人)に対する想いが強く印象に残っていたのですが。


実はWeb本編を読んでいる時は精霊の地で一気に登場人物が増えて、なかなか頭の中で識別が追い付かなかったのですが、書籍化でイラスト付きで読めるとキャラクターとしての認識がしやすいのは利点ですね。
そして本来はもっと後に登場するはずのレイスが書籍では1巻からちょこちょこと暗躍しているのが気にかかります。
彼は敵の黒幕っぽさ(あるいは最後の敵の参謀みたいな)が存分にあるので今後の伏線とリオとの因縁としての意味が強められている気がしてます。

*1:転生者の可能性が高いがその正体は今のところ不明