33冊目 『“文学少女”と死にたがりの道化』

内容(「BOOK」データベースより)
「どうかあたしの恋を叶えてください!」何故か文芸部に持ち込まれた依頼。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが…。物語を食べちゃうくらい深く愛している“文学少女”天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な“お化け”の嘆きと絶望の物語だった―。野村美月が贈る新味、口溶け軽めでちょっぴりビターな、ミステリアス学園コメディ、開幕。

前に人力検索はてなでお薦めされたのもあって久しぶりにライトノベルに手を出してみました。
食べちゃいたいくらい好きどころか、本当に本が好きで読みながらページをむしゃむしゃ食べてしまう筋金入りの“文学少女”天野遠子と、かつて女性名で応募した小説が新人大賞に輝き、謎の美少女作家と世間を騒がしてしまった過去があり、今はただ平凡に過ごすのが願いの男子高校生・井上心葉。
たった二人しかいない文芸部に一年生の女子から持ち込まれた依頼とは、弓道部の憧れの先輩に想いを届けるための恋文の代筆依頼だったという。
それがきっかけとなって、謎が謎を呼ぶ展開から弓道部の過去になにがあったか調べてゆく、あえて例えれば事件帖シリーズっぽいとも言えます。
「っぽい」というのは、明かされる事実が偶然に左右されすぎていたり、あくまでも遠子の想像がきっかけとなって犯人が自白するところなどがあまりミステリとは言えないから。
心葉の屈折した心情描写が鬱陶しかったりしますが、ストーリーとしては最後まで読ませる面白さはあります。
やはりヒロインたる“文学少女”天野遠子の浮世離れしたところが魅力です。心葉と遠子先輩とのやりとりも微笑ましいですね。
本好きとしては、遠子は嫌いにはなれないですな。その食生活が気にはなるけど。
太宰治人間失格』をモチーフにしたちょっと重い学園コメディというのが非常にユニーク。まぁ私は作品自体は未読なんですが、その雰囲気を味わえることはできました。