7期・47冊目 『戦国廃城紀行---敗者の城を探る』

戦国廃城紀行---敗者の城を探る

戦国廃城紀行---敗者の城を探る

内容(「BOOK」データベースより)
廃墟と化した名城を歩く。関ヶ原の戦いなどで敗れ去り、敗軍の将となった武将たち。だが、彼らにもまた名将があり、名城を築いた。石田三成佐和山城から、加藤清正の鷹ノ原城まで、十二将十三城を歩き、その魅力をいまに蘇らせる歴史探索紀行。図版多数。

かつて日本には数多くの城が存在し、中でも名の知れた城は観光名所として保存されていますが築城当時の建築物として残っているのはほんのわずか。堀や石垣以外はたいていは天守閣・本丸など一部の建物を復元したものとなります。
それでもそうやって人の目に触れられる城と違い、戦や政治上の敗者となって取り壊され、石碑等の案内が無ければそこに存在したのかわからないような城ばかり取り上げているのが本書となります。
たまたま著者は熊本県宇土市の生まれで、熊本といえば加藤清正による熊本城が有名ですが、南半分は同じ秀吉配下でもライバル的存在でもあった小西行長の領地となっていて、関ヶ原の戦い以後、敗者となった小西氏の城は宇土城を始め廃城にされたのですが、そういった城跡を巡ったことがきっかけになったか。


関ヶ原の戦いといったような節目の戦いや一族の運命を賭けた戦いで敗れると、敗者の城は政治的な理由もあって徹底的に破壊され、後世の史書においてもいかにも敗れる原因があったように悪く書かれがちです。
前者が関ヶ原の戦いで敗れた石田三成佐和山城)や小西行長宇土城)、大谷吉継敦賀城)らであり、後者が明智光秀坂本城)や浅井長政小谷城)となるわけです。
彼らの城を著者自身が巡り、実際の現状と現地での発掘調査に携わる人々の話を聞いてまわっています。
九州から近畿まで主に西日本が中心ですが、リアルに城跡巡りを体験できるような内容が戦国好き・城好きとしてはたまらないですね。
面白いのが勝者によって城が破壊されそのイメージが一掃されたかに見えても、旧城主の善政を慕う領民がいて密かに祀られていたり、時代が変わって彼らを取り上げようとする動きがあること。
意外だったのが、日本初の本格的な石垣作りだった観音寺山城が実は防備に向いてなかったせいもあってあっけなく落城したことや、殺生関白という悪名で知られる豊臣秀次*1が地元では町作りの功労者として慕われていることでした。


歴史というのは勝者だけでなく、敗者の立場から見ることで真実が浮かび上がってくることもあるという述懐には私も同意します。
ただ城跡に立ち城主への思いを馳せるのは心情的に理解できるのですが、個人的なドラマや小説のイメージまで持ち出すのは余計だったかなと思いますけどね。

*1:実際は秀吉によって振り回される人生だった不運な若者