6期・4冊目 『碧海の玉座6 遥かなるサモア 』

碧海の玉座〈6〉遥かなるサモア (C・NOVELS)

碧海の玉座〈6〉遥かなるサモア (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
史上最大の長征に出た日本海軍は、初陣の戦艦「武蔵」の奮闘により旧式のニュー・メキシコ級戦艦三隻を撃沈。英領フィジーの奪回を果した。「サモア攻略の成功は、対米戦争の終結に直結する」勢いづいた英国の主張を受けて日本軍も米領サモアへの進軍を決定。ここに日英両軍で十六隻の空母を擁する開戦以来最大規模の艦隊が出撃する。新鋭偵察機「彩雲」の索敵により先手をとった第三艦隊は米機動部隊を撃破。さらに戦艦「大和」「武蔵」率いる第一艦隊がサモアに肉迫するが、米国最新鋭の巨艦「モンタナ」が立ちはだかる。

初っ端からアメリカの補給部隊に襲いかかるは、空からランカスターに一式陸攻、海中からは英式Uボート。フィジー奪取後ますます激化するオーストラリア支援を巡る戦い。
それはいいんですが、海上を移動する目標に対して水平爆撃はまず当たらないと何度も書かれている割には当たり過ぎやしませんか?図体が大きく動きも遅い輸送船ならともかく、駆逐艦に当たるってすごい不運。
まぁシナリオの都合上、的中率にバイアスがかかるのは以前も見られたことですが・・・。


サモア攻略を巡り、戦力的に優勢な日英側に対し、米軍としてはある意図のためにサモア周辺に引き付けて戦おうとする。
結果的に空母同士の航空戦&戦艦主体の砲戦*1、そして基地攻防戦と二つの場面に分かれました。
戦い自体はいつものことながらであまり書くつもりありませんが、日米英の司令官の性格と行動が印象的でしたね。
どちらも実務系で慎重な日・塚原と米・ボアノールが積極果敢に出て、英・フィリップスは意外にも大胆な策を取る。
結局、目的完遂のために臨機応変に行動した英軍が戦巧者だったと思うのですがそこはほとんど略されていて、中盤は日米の戦いがダラダラ続いた観がありましたね。まぁ著者としては新艦偵「彩雲」と戦艦「モンタナ」を書きたかったのだろうなぁと。


オーストラリアの帰属問題という戦争目的を考えれば、フィジーサモアを巡る戦いが山場として描かれているのですが、正攻法的に今回の戦いを決戦として考えている日英側と、戦略の中の一環としてしか捉えていないアメリカ側との違いが見え見え。
詳しくは書かれていないのですが、補給線の伸びきって手薄になった日英軍の要衝のどこかを米軍機動部隊が叩くの様を次巻の冒頭で描くのだろうなぁと予想できます。例えばトラックとかね。


ネタバレすれば、最後にグァムからの報告電があったことと、陸軍戦略空軍の言葉からサイパン周辺が目標らしい。日本を屈服させるための戦略爆撃の地ならしですかね。*2
なんかアメリカらしくない奇手だけど、架空戦記だからまぁしょうがないか(笑)
主力である第3艦隊は戦力半減のままサモアまで行かずに帰途についたこと、万が一のために空母4隻分*3の戦力は残してあること。そのへんがどう使われるかですね。んー、なんとなく想像がつくのですが。

*1:史実ではほとんど無かったのに、これが実に良く起こる

*2:6巻の時点では1943年夏だから、既にB29の生産が開始されていて、日本本土爆撃が計画されていても不思議ではない

*3:といっても飛龍蒼龍+商船改造空母