4期・37冊目 『果てしなき流れの果に』

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

出版社/著者からの内容紹介
N大学理論物理研究所助手の野々村は、ある日、研究所の大泉教授とその友人・番匠谷教授から一つの砂時計を見せられる。それは永遠に砂の落ち続ける砂時計だった!白堊紀の地層から出土されたというその砂時計のなぞを解明すべく発掘現場へと向かう一行だったが、彼らは知る由もなかった──その背後で十億年もの時空を超えた壮大な戦いが展開されていようとは。「宇宙」とは、「時の流れ」とは何かを問うSFの傑作。

感想を書くのが非常に難しいですけれど、とにかく和製SFでは屈指のスケールの作品だということは言えるでしょう。
白亜紀の地層から出土した、永遠に砂の落ち続ける砂時計という不思議なアイテム。目的も作られた技術も謎な巨石の古墳。そして次々と失踪する関係者。歴史ミステリーまたはオカルトとしてかなり惹かれる導入部で始まり、舞台は変わって絶滅の危機が目前に迫る未来の地球の様子を描き、そこから時間旅行・パラレルワールド・超能力も交えた時空を超えた秩序vs自由の壮絶な戦いへと展開する様に振り回される。
その中でも、切り捨てられた人々が多元宇宙の中で牢獄もしくは種のサバイバルとも言えるような過酷な環境に放り込まれるあたりがかなりキツイ描写ではあるのですが、管理官による「人間は他の生物に対して同じことをやっていただろう」という台詞は冷酷でありながらも真理を突いているとしか言えないですね。


物語の長さは遂に十億年にも及び、その過程でいくつもの伏線が明らかにされていく様には舌を巻きます。そして自然に包まれた中で出会った二人の老人による終盤は壮大な物語の割には何とも穏やか。*1
読んでいる最中は綿密なプランをもって構成されてのかと思っていましたが、著者の後書きによれば、執筆の中で苦しみながらも勢いによって書かれたのだと知って再度吃驚でありました。


ただ、自分の中では後半の内容が消化不足であったのは確か。しばらくしたらもう一度読み直してみようかと思います。
ちなみに、ある世界では、中には国土が水没して世界各地で難民と化し、ユダヤ人の如く約束の地に固執する日本人の姿が描かれ、後に発表される『日本沈没』後を彷彿させるシーンもあったりします。そう言えば、『日本沈没』の第2部が文庫化されたのでこれも読んでみたいもの。

*1:もっとも、そのエピローグは序盤に書かれている