4期・25冊目 『たたり』

たたり (創元推理文庫)

たたり (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
心霊学研究者モンタギュー博士は、幽霊屋敷として知られる「丘の屋敷」を調査するため三人の男女を呼び集めた。まるで意志を持つかのように彼らの前に怪異を繰り広げる「屋敷」。そして図書館に隠された手稿が繙かれ、秘められた過去が明るみに出るとき、何が起きるのか?幻想文学の才媛が描く、美しく静かな恐怖。スティーヴン・キング絶賛の古典的名作、待望久しい新訳決定版。

タイトルと表紙*1を見るかぎり、最近の和製ホラー映画の如く、いわくありげな屋敷を興味本位に訪れた複数の男女が(過去に酷い死に様をした怨念による)恐怖と惨劇に襲われるってな印象を抱いたのですが、実際は全然と言っていいほど違います。
だからそういうのを期待する人は肩透かしをくらうでしょう。お化けなんかより生きている人間の心の方がよっぽども怖いよって人向きじゃないでしょうか。確かに「丘の屋敷」における怪奇現象は数多く出てくるのですが、それらはどっちかと言うと脇役。*2主となるのは主人公・エレーナの心理描写ですね。


それまでの人生で良いことなど少しも無かったエレーナが、家族とのゴタゴタから逃げるようにして出発するところから始まります。長い道のりの中で見られる現実逃避癖と他人との関わりが苦手な様子が結局最後の結末を暗示していたのではないでしょうかねぇ。特に興味あったわけでは無くてたまたま参加することになった他の二人と違って、エレーナだけが今回の体験に過度の期待を抱いている様子が妙に気になったのですが、やはりというかハッピーエンドなど用意されているわけなく、途中期待を持たせておいてズドンと落としてくれる。


ほとんどがエレーナの視点から成り立っていることで、読んでいくうちに感情移入せざるを得ないのですが、知らず知らずのうちに狂気に蝕まれていく様が結構きますね。イタイくらいに。
amazonのレビューにもあったのですが、精神的に参っている人・人間不信に陥ったことがある人にはある意味劇薬かもしれないです。

*1:はまぞうで出た方じゃなくて、自分が入手したのはこちら⇒

*2:早々に博士によって一部種明かしがされたり