4期・1冊目 『ファイナルシーカー レスキューウイングス』

内容(「BOOK」データベースより)
あらゆるレスキュー隊があきらめた時、“最後の切り札”として出動するレスキューの最高峰、航空自衛隊救難飛行隊。彼らは警察・消防・海上保安庁が救助不可能と判断した、最悪の条件下で出動する、日本最高の救助のエキスパートたちだ。最年少の若さで配属された高巣英治は、仲間とともに吹雪のなか出動する! 星雲賞受賞作家が描く、レスキュー小説の最高傑作。

『空へ -救いの翼』の実写映画化の記事を読んだことがあって、おや?と思ったのですが、救難飛行隊が舞台であり女性隊員が登場するという共通性はあっても、別に繋がりは無いようですね。
この分野では大石英司の著作を読んだことがありますが、今までSFジャンルで楽しませてもらっている小川一水によるものとは意外な思いで手に取りました。


少年時代にふとした遊びで海難に遭遇した主人公が絶体絶命の危機を救われたのをきっかけに救難員となるわけですが、そのきっかけとともに幽霊である「灯(ともり)」にとりつかれることになり、彼女のおかげで目に見えない遭難者を発見できることができる反面、隊員として資質や任務に対する目的に悩むという始まり。
真剣勝負である救難場面のリアルさや救難任務に備える隊員たちの日常など、さすがに上手く描かれていますね。さらに自衛隊という微妙な立場に日々悩み気を配り、それでいて救難のプロフェッショナルとしての気概を持つ男たちの姿がストレートに伝わってくるのです。


難者が反自衛隊の立場だったり、台風災害による大勢の民間人救出、某国潜水艦の隊員救助、といったエピソードでもって困難を乗り越えていく様を飽きさせずに読ませてもらったのですが、一つだけ言わせてもらえば、主人公にとりつく「灯(ともり)」の存在によってファンタジックにする必要なかったのではないかと。それだけ救難員の任務というのは興味深い要素にあふれるわけですから。