3期・69冊目 『狂い壁狂い窓』

内容(「BOOK」データベースより)
築六十年近くなる「樹影荘」にいつとなく奇妙なことが起こるようになった。もともと産婦人科病院として建てられた古びた洋館だったが、夥しい虫が壁から無数に湧いてくるようになり、窓の外ではガサガサ物音がひびく…。そして―部屋を覗く蝋面、投げこまれたマネキンの首、トイレの死の文字、うめられた屍体。やがてどこからともなく、床を踏むかすかな軋みが6組の住人におそいかかる。

冒頭からいかにも闇から魑魅魍魎どもが這い出てきそうなおどろおどろしい雰囲気が漂い、どこか病みがちな登場人物たちの思考。なにか覚えがあると思ったら解説によると江戸川乱歩を意識されていたそうですね、納得。そういや、使われている言葉遣いにも昭和初期っぽさを感じます。
舞台は、築年数が半世紀を超え、なにかと曰くありげな樹影荘、住人の中でも謎めいた美貌の女性(緋沙子)と少年(響四郎)となかなか興味をそそる設定ではあります。


だとしても読み辛さは格別。怪奇現象が次々と現れては不可解さを残したままめまぐるしく人物の視点が入れ替わる。
終盤になってようやく数々の伏線が生きて一気に進み、読みごたえを感じたことは感じたのですが、ミステリとしてはちょっと怪奇表現が過剰な気がしないでもないです。*1




個々の部分のネタばれになりますが、緋沙子に影ながらつきまとっていたように思えた最初の犠牲者・江島の真意が驚きでした。それにしても彼の入院時代をエピローグに持ってきたのは不思議だったけど。
それから真犯人のその後の行動がよくわかんないです。事件のあらましを知った響四郎らを人目を避けるに絶好な場所に監禁したのにも関わらず、あっさりと開放した上で自殺を選ぶとは・・・?うーむ。

*1:似たような雰囲気を漂わせる作品としては、京極夏彦の方が楽しめるかなぁ