3期・19冊目 『すべてがFになる』

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

個人的にとてもレビューが書きにくい作品です。続きが気になるほど読めたし、コンピュータの基礎知識やプログラムによる仕込みがこうやって密室トリックや各々の謎解きに使われることが新鮮で、かなり驚きを感じたものです。しかし凄惨かつ異様な事件なわりには淡々としすぎるし、行動理由には納得いかないものが多い。
これは私がコンピュータには携わっているものの、本を読む際はやはり文系的な思考タイプなせいかもしれんです。


それでも、こういうコンピュータ・テクノロジーが重要な要素となっている作品を初出から10年以上経ってから読むというのもなかなか面白いものがありますね。事件の舞台となった研究所は真賀田四季という天才に依存しているので特殊でしょうが、世の中のIT企業なんかは昔の会社とはだいぶ体質が変わってきてますからさほど違和感を感じないです。仮想現実に関しても、だいぶ一般的になってきている。
ちなみに犀川創平&西之園萌絵コンビと真賀田四季はシリーズ化された他作品でも登場するらしい。犀川創平は天才では無いけれどもなかなか深みのある人物なんですが、彼の思考を通して見られる一方的な決め付けには納得いかない部分は感じます。読み進めていく内に西之園萌絵の印象は薄くなっていって、逆に真賀田四季の方が気になる存在となっていきました。また別の作品で会ってみたい気はします。