3期・14冊目 『邪馬台国はどこですか?』

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

出版社/著者からの内容紹介
5W1H仕立ての「悟りを開いたのはいつですか?」「邪馬台国はどこですか?」「聖徳太子はだれですか?」「謀叛の動機はなんですか?」「維新が起きたのはなぜですか?」「奇蹟はどのようになされたのですか?」を収録した歴史ミステリ連作集。軽快な筆致で史上の定説にコペルニクス的転回を迫る、奇想天外なデビュー作。文庫書き下ろし!

解説にあるように歴史ミステリーというのは、読者の方にある程度の歴史知識が要求され、作者としても史料検証などに多大な時間と努力を強いられる。そんなハードルが高い(それだけに傑作に出会えると喜ばしい)分野ですが、本作は歴史に興味を持ち始めたバーテン・松永が読者の分身がごとく、中学高校の教科書程度の知識で充分楽しめる内容です。
あえて歴史上では当然のように思われている説を見事にひっくり返すところが刺激的。「その発想は無かった!」的に驚かされます。皆を煙に巻くような感じでオチもあって面白い。ただ読む方が真面目すぎたり偏狭な性格だったりすると楽しめずに腹立つことでしょうね。
歴史というのは、新たな発見によってそれまでの常識が覆ることもあるから、昔の知識だけで凝り固まってしまうのは勿体無いもの。本作を読んで、今までとは変わった歴史の見方を知るのもいいんじゃないでしょうかね。


そういうわけで、いろいろと楽しめた作品だったのですが、不満があるとすればキャラクターの扱いに偏りがありすぎることですね。
とぼけた口調でありながら、時には鋭く定説への疑問を突き、専門家(ここでは主に静香)からのツッコミにも冷静にいなす宮田。まぁこの作品の原案者(という設定)だからメインになるのは当たり前でしょうけど、問題は本職の三谷(古代日本史が専門の教授)と助手の早乙女静香(美人天才歴史研究家との肩書き)。
1章につき、2、3回程度しか発言(しかも短い)しない三谷はまるで存在感無し。静香が掲げるのは世界史の流れも見なければ日本史は理解できないとのことで、それは大いに頷けるのだけど、それが肝心の歴史談義には絡んでこない。宮田に翻弄されて怒ってばかりいるし、彼の説に対する指摘には鋭さを欠く気がするし。もう少し専門家ならではの反撃を期待したかった。でもそうすると史料の引用ばかりになり、しかも長くなって面白みが減じてしまうのかな。