3期・6冊目 『地下室の箱』

地下室の箱 (扶桑社ミステリー)

地下室の箱 (扶桑社ミステリー)

出版社/著者からの内容紹介
ニューヨークを舞台に、あの『隣の家の少女』の悪夢が再び蘇る!
妻子あるグレッグの子を宿してしまったサラ。中絶の道を選んだふたりが病院に向かう途中のことだ。グレッグがサラの傍を離れたほんの数分の間に、彼女はさらわれてしまった! 気を失ったサラが意識を取り戻したのは、どこかの地下室。待ち受けていたのは、不条理で際限のない暴行だった!

犯行が家族ぐるみでかつ妄想に取り付かれたさまは確かに『隣の家の少女』と同様の胸クソ悪さを味わうのですが、書き方として『隣の家の〜』が傍観者の視点で歯がゆさを存分に味わされるのに対し、本書は主人公・サラの視点になっているので読む方としては取り方が微妙に違いますね。


【以降ネタバレあり】




絶望的な状況においても、主人公のサラは冷静さを失わずに、犯人を観察したり客観的に自分自身を分析しようとする。そして自分の体に芽生えた生命のために思い切った行動に出る。そういった精神的な強さは『オフシーズン』におけるマージーを思い出します。そういやジャック・ケッチャムの作品って、極限状況においては男は弱くて、女の方が強いですね。
結果的に生き延びることができたので、読後感としてはさほど悪くはないっす。むしろ恐怖を覚えるのは途中の箇所にあるんじゃないかな。例えば屋根裏部屋にて偶然サラが手術道具を見つけたところでのやりとりにゾクっときましたね。自分の身を切り裂かれるところを想像すると男は特に弱い。
ちなみにエピローグでは生まれた赤ん坊と最後までサラに付き合った猫に命名されるのだけど、そこで名前の組み合わせと由来*1が『隣の家の〜』を彷彿させて、ちょっとドッキリさせられるのです(作品間の繋がりは無いと後書きにあるけど)。

*1:「強さ」を意味する"メグ"と「友だち」を意味する"ルース"