- 作者: マーチン・ファンクレフェルト,Martin van Creveld,佐藤佐三郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
ナポレオン戦争から第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に至るまでの代表的な戦闘を「補給」という観点から徹底的に分析。補給の計画、実施、戦闘への影響を、弾薬、食糧等の具体的な数値と計算に基づいて説明し、補給こそが戦いの勝敗を決するということを初めて明快に論じた名著。待望の復刊。
近代以降の軍事作戦を兵站の面から検証する目的で書かれた本書は、1部隊ごとの補給量や行動可能範囲まで細々と数字を出して評価を実施している点と読みづらい文章*1から、決して一般人向けではない。(戦史に興味ある私でも辛かった)素人が興味を抱きやすい戦略・戦術についてはばっさり切捨てられている。*2
まぁもともとが大学の出版部で出されたというように、研究書の類なので仕方ないかもしれない。更に本書ではヨーロッパ大陸における地上作戦ばかり取り上げているので、地理的な基礎知識が無いと感覚が掴みづらい。(それにマイルやポンドを頭の中で換算できないと!)
細々とした内容はさておき、作戦が進んでいくと予定されていた計画と実際の運用のずれが生じるのが興味深い。そこには季節や地形といった自然に左右される要素もあれば、輸送手段や兵器などの技術の発達に対して、現実に即した運用や支援組織作りといった人間的要素もあって、パターンは一定ではない。しかも時代によって、どんな状況(移動時や包囲時など)で軍隊が飢えに直面するかは違うのだ。
後世の私達の目からすれば、その行動を政治・戦略や指揮官の性格などの理由からいろいろ考えてしまいがちだが、実際は補給上の理由から行くか退くかの決断が多かったらしい。
また、後世の評論家からの作戦に対する評価が本当に正しいかどうか、軍事の天才と呼ばれる人物が兵站についてどう考えて実施していたのか、これでもかというばかりに詳しく検証している。中でも印象深かったのはロンメルのアフリカ軍団への補給の実態であった。
読みにくい点は別としても、内容的には戦史について理解を深めるには向いていると思う。通読するよりも、ナポレオンや普仏戦争など個々の戦史を調べたい時に章ごとに読み直すにはいいかもしれない。
蛇足ながら。
amazonのレビューにもある通り、石津朋之氏による文庫版解説が簡潔かつ要点を得ていてわかりやすい。本編を読み終えるのに時間がかかったのだけど、最期に解説を読んで前半の内容を思い出したり。実はこれだけ読めば済む話しじゃ