ローマ人の物語 (29) 終わりの始まり(上) (新潮文庫)
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ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)
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ローマ人の物語 (31) 終わりの始まり(下) (新潮文庫)
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- アントニヌス・ピウス(138年 - 161年) ・・・ピウスは「敬虔な」の意。その在位中はごく平穏な治世(先代までの功績もある)。先帝とは対照的に本国イタリアから出ることなく、蛮族対策を怠って後代に禍根を残したともいわれる。
- マルクス・アウレリウス・アントニヌス(161年 - 180年)…哲人皇帝。文を愛する性質ながら先代のつけか、戦いに明け暮れざるを得なかった人物。何にでも真剣に取り組む姿勢が好ましいが生真面目さが寿命を削ったか。妻には恵まれたが、後継者には・・・。
- コンモドゥス(180年 - 193年)…暴虐帝。まさに不肖の息子。映画『グラディエーター』にて父を殺し、歴戦の将軍(主人公)を追放した皇帝のモデルだそうな。*1
- ペルティナクス (193年)・・・たたきあげの軍人でシビリアンの経歴も申し分なく、高潔な人柄。皇帝に推され、先帝の暴政を糾そうとした改革のさなか、わずか3ヶ月で暗殺される。周囲に恵まれなかった不運の人。
- ディディウス・ユリアヌス(193年)・・・ペルティナクスの死後に名乗りを上げ、皇帝の地位を競り落として即位した人。就任直後から支持も正統性も得られず、属州で起こった反乱の中でどさくさに紛れて殺されてしまった。
- セプティミウス・セウェルス(193年 - 211年)・・・ディディウス・ユリアヌスの死後、同じ時期に名乗りをあげたライバル達を蹴散らして即位。内乱を収束させた後、パルティアに大勝、軍団兵の待遇改善など功績をあげたものの、長い目で見れば結果的に帝国の危機を呼び込んでしまった。
※括弧内は在位年
この時期、対外的にはゲルマン人の侵入に対する防衛と反撃、および強敵・パルティアの戦いが目立ちます。
前者は国境付近のゲルマン人は更に内奥部の部族に押し出されるかたちで帝国領内に侵入するパターンが増えてきて、それに気づいたマルクス・アウレリウス帝が属州化という抜本的な対策を打とうとしたところで死を迎えたわけです。それが実現したら後世にどう影響したか気になるところです。
それにしても蛮族対策のところでは、いちいちカエサルを引き合いにするのがちょっとくどい。著者はどんだけカエサルが好きなのかと(笑)
パルティアに対しては、戦いを繰返しつつも、力を見せつけた上で交渉のテーブルにつくという一定したパターンが、パルティアの国力低下とササン朝ペルシアの台頭によって変わりつつあります。そのことにセプティミウス・セウェルス帝の時期に気づいていません。国家百年の計を考慮した外交の難しさというものですね。
内政に関しては、優れた者を養子にして後を継がせる形がたびたび実子相続になったり、クーデターが勃発したこと。前者はまだ元老院とローマ市民*2に承認を得るという伝統を保持していますが、内乱期の皇帝すげ代わりは軍事力が背景になっていて、元老院はただ追認するだけの存在。まさに3世紀の危機(軍人皇帝時代)を予兆させますね。
そして帝国の防衛を司る軍団兵の待遇が一挙に改善されますが、給与などの支出の増大が帝国の財政悪化に繋がっていきます。
いずれにせよ、著者が繰返して述べるローマの優れたシステムは何とか保たれていて、まだ帝国は繁栄と平和を謳歌していますが、既に悪い兆しが見えてきたということで、「終わりの始まり」なんですね。
ちなみに31巻の最後に年表があって、世界規模での出来事が見られます。中国大陸はちょうど後漢から三国時代。アントニヌス・ピウス(またはマルクス・アウレリウス)の代に後漢と交流を持った*3と知ると興味深いです。けれどローマ帝国以外はあっさりした年表なのが寂しい。
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