2期・45冊目 『ブラッド・ミュージック』

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

内容(「BOOK」データベースより)
遺伝子工学の天才ヴァージル・ウラムが、自分の白血球から作りだした“バイオロジックス”―ついに全コンピュータ業界が切望する生体素子が誕生したのだ。だが、禁止されている哺乳類の遺伝子実験に手を染めたかどで、会社から実験の中止を命じられたウラムは、みずから創造した“知性ある細胞”への愛着を捨てきれず、ひそかにそれを研究所から持ちだしてしまった…この新種の細胞が、人類の存在そのものをおびやかすとも知らずに!気鋭の作家がハイテク知識を縦横に駆使して、新たなる進化のヴィジョンを壮大に描きあげ、80年代の『幼年期の終り』と評された傑作!

前半は“知性ある細胞”(作中では”ヌーサイト”と呼ばれる)を生み出したヴァージル、後半は感染された身を実験体として自ら隔離施設に入ったバーナード博士と2人の科学者がメインとなっている為か、パニック描写は控えめですね。
軍事バランスが崩れたことによって、ソ連が露骨に手を伸ばし始めるあたりは時代を感じさせますが、瞬く間に感染が広がって国全体が廃墟と化すアメリカの状況が唐突すぎのような・・・。


それにしても人間だけでなく、建造物や自然まで溶かし新たな世界を作り直していく様は想像しただけでも不気味。
1人の科学者のちょっとした行動から、このような展開を思いつくあたりは尋常ではないですね。意思に関係なく新たな世界の要素に取り込まれてしまうのは、フィクションとは言え怖いものがあります。
そんな中で偶然感染せずに生き残った*1スージーがけなげです。変化した家族による向こう側への誘いを振り切り、孤独に耐え歩いていく様に精神的な成長を感じたのですが、はたして自分だったらどうするでしょうか?


正直言うと、後半部分にてバーナード博士とヌーサイトは交感は興味深い部分はあったものの、全体的に難解でした。
購入した順番で『幼年期の終り』の前に手を出してしまったのですね。読んだ後に質問を読み返して気づいたのですが、推薦してくれたrikuzaiさんのアドバイス通りに後にすればまた読後感が少し違っていたのかもしれません。

*1:体の中の化学的要素の関係で、感染を免れたのは国中でほんの20〜25名程度という記述あり。