2期・8,9冊目 『風は山河より 第二、三巻』

風は山河より 第二巻

風は山河より 第二巻

風は山河より 第三巻

風は山河より 第三巻

清康が非業の死に斃れると同時に始まる多難な岡崎松平家の状況がメイン。野田菅沼家は定則⇒定村への代替わりと定則の死がある他は、三河の中でも特別争いに巻き込まれることなく、傍観者の立場と化しています(それでも国境付近に城を持つ者として必須の情報収集に怠りが無いさまは描かれていますが)。
これは、野田菅沼の3代をテーマに書く以上、松平3代もきちんと書く必要があると筆者が述べてからなのでしょう。*1


松平3代と言っても、間に挟まれた広忠は存在感薄いですね。近侍の臣に暗殺された*2という説があるのと、今川に臣従する為に嫡子・竹千代(後の家康)を人質に差し出したというくらいしか聞いてないですし。*3
作中では、決して将として器が小さいというわけではなく、配下や家族を大事にした魅力ある人物として描かれています。ただしそれが通用したのは、岡崎松平家のみ(意外にも敵である織田信秀も評価してますが)で、見方によっては頑迷で外交感覚が皆無でもあったようで。
総じて見れば、尾張の織田、駿河の今川、それらに囲まれて去就に悩む豪族達と、それぞれの置かれた立場によってどう生きたかの違いが際立ちます。


特に尾張守護代の奉行の立場から織田宗家や守護家を凌ぎ、美濃だけでなく三河まで手を伸ばす勢力に成長させた織田信秀や、今川家の対織田強硬派とも言っていい黒衣の軍略家・太原雪斎の活躍が新鮮でしたね。


3巻の後半にて松平広忠に次いで、織田信秀太原雪斎と相次いで無くなって、いよいよ信長・家康が物語に登場してきます。ついでにと言っては失礼ですが、最後の最後に三河東部に戦雲が沸き起こり、菅沼一門にも大きな動きが起こります。
その結果は・・・。どうなるんだ?野田菅沼家は??って感じで気になる終わりでしたね〜。

*1:ついでに1人の人物を描くには、3代通じて見ないと、その行動原理まで詳しくわからない、とも書いてますね

*2:清康が斬られたのと、家康の嫡男・信康が斬られたのも同じ村正だったという為に、徳川家に祟る刀として、家康が忌み嫌ったという伝説があるとか。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E6%AD%A3

*3:その人質を戸田氏に奪われ、織田家に売られても、今川を裏切らなかった。その律儀さはどういう理由によるものか、というのも本作の見どころ