2期・6冊目 『激浪の太平洋2―巡洋戦艦「浅間」』

激浪の太平洋〈2〉―巡洋戦艦「浅間」 (C・NOVELS)

激浪の太平洋〈2〉―巡洋戦艦「浅間」 (C・NOVELS)

本当に出してくれました。月刊3冊連続刊行!
前巻もそうでしたが、ちゃんと欧州戦線とリンクさせながら太平洋戦線では戦いの詳細をきっちり書いてくれるのが嬉しいです。ところどころさりげなく挿入される過去の戦いが非常に気になるのですが・・・。特に地中海の戦いではイタリア海軍はしっかりやっていたのか?あとアフリカ戦線での欧州勢vs米の陸戦ではどんな戦車戦が繰り広げられていたのか・・・?
これで一区切り付くのかと思いきや、本当にあそこまでいくのかという期待感を持たせたまま終わりました。
次はさすがに2ヶ月空きますかね?これでしばらく中断だったら蛇の生殺しですよ。*1


【以下、ネタばれ含む】
緒戦の勢いが落ちて徐々に守勢に追い込まれたアメリカですが、B29という切り札で挽回しようというわけですね。それにしても今回のB29は堅過ぎ。『修羅の波涛』の外伝の時とは装甲の厚さが違うのかよ?
飛燕どころかスピットファイアやフォッケウルフの最新型でさえ一機も撃墜できないなんてホント堅過ぎ。もっとも欧州空軍の更に強力な戦闘機(Ta152やジェット)を登場させる為の布石か、なんて見方もありですね。


さて今回は地球の裏側の事情もあって、序盤に放棄したマーシャル奪回へ向けての攻勢に出る日本軍。
昭和19年末に数だけでなく質も伴った機動部隊を揃えられるなんて夢みたい。*2
その理由の一つが数ある架空戦記の中でも珍しいタイプの主力艦戦・烈風の採用なのですね。*3
うーむ。あえて記述は抑えてありますが、今回の日本軍は『遠き曙光』『海の牙城』なみの内部改革が行われたようです。欧州各国との交流という言わば外部からの刺激が強かったのだろうと推測。


技術や資材はかなり英独からの支援に頼っていますが、彗星・天山・彩雲が英海軍にも採用されたという記述はちょっと嬉しかったですね。酸素魚雷以外にもお返しができたわけだと。


さて、メインの海戦を読んだ印象ですが、横山信義氏の書く米軍の中ではかなり弱いというか、日本海軍が運良すぎのような気もしました。満を持して登場のアラスカ級も今回はあまりいいとこなしだったし(次回は逆襲のアラスカか?)。
特に艦爆・艦攻に多くの犠牲を出しながらも空母エセックスを撃沈したのは感動物です。エセックス不沈伝説は本作で遂に崩れました。
今回、米軍には現場と上層部の乖離という不利設定が敷かれているせいでしょうね。


あと史実と言えば、原爆やロケット開発がどうなっているのでしょう。*4
確か『閃光のパナマ』の舞台が昭和20年代でした。戦争終結の決め手がどうなるのか(パナマの運河破壊によって急速に状況が変わるのか)が気になりますね。

*1:実績的に他の作家と違って大丈夫だと思いますが

*2:空母の数だけならば史実だってけっこう残ってましたけどね

*3:ロシアのIl-2シュトルモヴィークの構造を取り入れて、速度よりも防弾性能を重視したという、日本軍らしくない戦闘機w

*4:史実と逆にアメリカでユダヤ人が迫害されているので、英独で開発される可能性大。言及あったZ機の実用化とタイミングが同じになるか