59冊目 『太平洋戦争全史』

太平洋戦争全史 (河出文庫 (た22-4))
作者: 太平洋戦争研究会, 池田清
出版社/メーカー: 河出書房新社
発売日: 2006/07/05
メディア: 文庫

時期的なものもあるんですが、太平洋戦争全般の経緯をざっとおさらいしてみようかということで、ちょうど文庫で見つけたので買ってみました。
私個人としては、一時期『丸』や『歴史読本』とか光人社文庫などをよく読んでいた時期もあったのですが、把握している部分が偏っていたり、記憶違い等によって頭の中がごちゃごちゃになっていると思ったので(年月が経って忘れている部分も多いです)。


構成としては、編者・池田清による序章と解説があって、その間に太平洋戦争研究会による「ドキュメント・太平洋戦争」として真珠湾奇襲直前から無条件降伏までです。


「ドキュメント・太平洋戦争」の部分は、アレですね。教科書的な内容でさほど興味深いってほどではありません。時系列がところどころ行ったり戻ったりするので、注意しないと混乱する部分もあります。
本当は書かれている以上の詳しい内容を読みたくて、物足りなく感じたりました。まぁ、それはまた別の本を探してみればいいわけで、良いきっかけになったと言えるでしょう。


戦争自体について、思ったのですが、なしてあそこまで日本軍の上層部は無能っぷりを発揮したのでしょうか。
そもそもの国力の差は別としても、彼我の国力に関する認識不足?計画の杜撰さ?情報の軽視?官僚組織の硬直?
いろいろ原因あり過ぎです。
それに対して、敵軍であるアメリカでさえ評価した程の日本軍兵士の健気さと、現場の(部分的にですが)将兵の巧妙な戦いぶり。
それだけでは如何ともし難く、戦争後半になればなるほど、参加兵力に対して増える死傷者数の割合に驚愕します。
そりゃあ、どの国の軍隊だって失敗・読み違い・不運はあったでしょうが、こうやって改めて読むと、日本軍の過誤の多さに哀しささえ感じました。


さて、池田清による解説の方は、満州事変から太平洋戦争開戦に至るまでの道のりの説明があって、忘れていた記憶を思い出しつつ読むことができて参考になりました。
いきなり国家間の対立が発生したのではなくて、様々なボタンの掛け違いがあったということですね。
連合国側でも足並みが揃うまでいろいろあったということがよくわかりました。


蛇足ながら、太平洋戦争研究会によるあとがきで、やたらと「被害者国の立場」や「中国を始めとするアジア各国へ与えた戦禍」を知ることで現代の近隣外交に役立つようなことを強調されていたのが白けましたね。
自国の歴史を知る際にまず他国への配慮を念頭に入れろっていうのはどうなの?
いや、某国の教科書にように都合の悪いことは皆無視しろっていうわけではないけれど、歴史を知る姿勢は、現在の善悪基準ではなく、まず自国の立場に立って当時の状況を踏まえるようにした方がいいと思うのですよ。