20冊目 『波王の秋』

波王の秋 (集英社文庫)
作者: 北方謙三
出版社/メーカー: 集英社
発売日: 1998/11
メディア: 文庫

北方謙三は初めてです。以前に人力検索での質問にて推薦された本で、あらすじを見た限りでは、結構期待してました。本当にあったかもしれない元朝の3度目の日本侵攻を防ぐ為に立ち上がった水軍の話で、いかにも歴史の表に出てこない裏エピソード的なのが良さげです。
ちなみに元朝については、国内がガタガタだからこそ、外に敵を作るという思惑が説得力ありすぎて怖いくらいです(笑)


前半はそれなりに楽しめたのですが、中盤以降倦みはじめて、最後はやっと終わってほっとした、というのが率直な感想でした。
主人公である波王(小四郎)は魅力ある人物だし、海戦は迫力ありますし、良い点がいくつもあるのだけれど、内容に比してどうにも長すぎる気がします。


別に私が長編が苦手というわけでは無いのだけれど、なぜ飽きたのか考えてみました。

  • 主人公周囲の立場ばかりで、元や高麗、大陸の叛乱軍などの立場の記述がほとんど無い。
  • 時代背景や状況説明がほとんど無い。元朝末期らしく朱元璋が出てくるので、かろうじて室町時代初期(2代将軍足利義詮の頃?)と思われる。
  • 長編歴史小説の割には、登場人物が少ない。主人公周辺でしか物語は語られていない。最後の決戦で波王水軍を苦しめた元の水軍の主将さえ名前が与えられていない。魅力的な敵人物こそ物語を面白くする要素になる場合もあるのに。
  • 人物に対して、似たような表現・記述が繰り返される。
  • 少数の部隊が大軍を翻弄する戦ばかり目立つ。小が大を倒すのは格好は良いが、そればかり続くとリアリティを感じられなくなる。


この作品を充分楽しめた人もきっといるでしょうし、上記意見は重箱の隅をつつくような感も無きにしも非ずですが、ちょっと私には合わないかなぁという気がしました。