9期・54,55冊目 『降伏の儀式(上・下)』

降伏の儀式〈上〉 (創元推理文庫)

降伏の儀式〈上〉 (創元推理文庫)

降伏の儀式〈下〉 (創元推理文庫)

降伏の儀式〈下〉 (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
1990年代、とある天文台が観測した謎の光点。それは地球に向けて接近する、一隻の巨大宇宙船だった。かくして人類は、初の地球外生命到来の瞬間を待ち構えるが…奇妙にも、異星船は地球からのメッセージになんの返答もよこさない。彼らは一体なにを目論んでいるのか?アメリカSF界きってのベストセラー・コンビが放つ、最新地球侵略SF大作!

土星付近で発見された異星人の巨大宇宙船が一路地球を目指していると判明して沸き立つ人類。
軍の動員をかけたソ連に対抗措置を取る一方で、座して待つより使者を派遣しようと、アメリカ政府では宇宙開発関連に詳しいドーソン議員を大使とする一団が軌道上の宇宙ステーションへ赴きます(といってもソ連しかステーションを持たないので間借りするわけですが)。
歓迎と警戒が入り混じる中で様々なメッセージが宇宙船に対して送られるのですが、ことごとく無視されていて、その真意が測れぬ中でのファーストコンタクト。
それは有無を言わさない一方的な攻撃でした。
ソ連アメリカは何とか反撃はするものの、異星人は空からの正確無比な攻撃(レーザー兵器や隕石落とし)によって圧倒。
ついに異星人は分岐船*1より歩兵を降下させてアメリカ国内に橋頭堡を築くことを許してしまいます。
捕虜として連行されたソ連のクルーやドーソン議員らは、象に似た巨躯を持つ異星人の言語を習得させられ、コミュニケーションを取る内に彼らは地球に植民する意図をもってやってきたことを知ります。
果たして人類は彼らに降伏せざるを得ないのか?


ひとことで言えば地球侵略を目論む異星人対人類(メインはアメリカ)の戦い。
接触→奇襲による形勢不利→ささやかな抵抗→切り札による反撃→激闘の末の勝利。
そんな流れになるのがいかにもアメリカ人好みなんでしょうな。
それにしても長かった…。
前半は異星人含め多くの登場人物が入れ代わり立ち代わり出てきて人物名が追いつきません。*2
読み終えてみれば、いかにも核と宇宙開発を主とする冷戦時代を背景とした様々な要素がじっくり描かれていたのは理解できます。
核の冬を前提としてシェルターを準備していたアメリカのサバイバリストたち。
ソ連内部での権力闘争。
対異星人攻撃のために米ソ協調の裏での政治的取引。
異星人側も宇宙植民に関しての内部対立があったり...etc
でも終盤に怒涛の展開に入ると、そのあたりがものの見事にすっ飛ばされていた気がしますね。


異星人たち(自称:旅する群れ)は強力な武器や恒星間航行を得ているがそれらは自前の技術による成果ではなく、滅んでしまった先進文明の知識によるもの。
それもあってか科学技術含めて文明の差が隔絶しているわけでもなく、自らの流儀を押し付けようとして失敗するのもなかなか良い設定でしたね。
彼らが人類と接して、種族としての規範があまりにも違うことに戸惑うあたりは面白かったです。
タイトルでもある「降伏の儀式」(仰向けになった相手の胸を足で踏むこと)を行ったら絶対的な服従を誓うのが彼らのルールであるので、降伏させたはずの人間が抵抗することが理解できなかったりする。
それゆえ人間の群れ全体が反逆したとみなして平然と皆殺しする悲劇が発生してしまう。
また群生生物でもあるため、降伏さえすれば異星人同士でも仲間として受け入れることさえ可能だったりするし、発情期があって家族的な結びつきを重視する。
たまたまアメリカの住宅から押収したポルノビデオを子ども含む捕虜全員に見せて「これはどういうことだ?」と問い、むしろ人間の側が喧々諤々の議論、というか罵倒合戦に発展してしまうあたりはブラックユーモアを感じました。
異星人による侵攻が進み、圧倒的な不利な状況で人類(というかアメリカ)の切り札である戦闘艦ミカエルの発想から逆襲まではいかにも冷戦期の非常手段なハチャメチャな感じはありましたが、疾走感と緊迫感が溢れていて楽しめました。

*1:母船に搭載された小型飛行機

*2:そういや後半に入るとソ連の人物は捕虜を除き、さっぱり登場しなくなった

ぼたもち?おはぎ?

ちょっと時期を過ぎてしまいましたが、先日のお彼岸で思ったこと。
春と秋のお彼岸の時期になると食べるのが「おはぎ」あるいは「ぼたもち」。
どっちも同じものを指すのは知っていたものの、うちではなんとなく「おはぎ」で通していましたので、以下「おはぎ」で統一します。


妻実家の方から贔屓にしている和菓子屋で買った餡の「おはぎ」。
私の実家の方からは母が作った餡(つぶあん)と胡麻ときなこの「おはぎ」がもらえるので毎回それを食べています。
一般的には「おはぎ」は餡子でくるんだもの、または全体にきなこをまぶしてあるのを砂糖をかけて食べるものなのではないかと思います。
でもうちでは母の作った3種の「おはぎ」の内、胡麻が一番人気。あまじょっぱい味です。
そしてきなこのは砂糖をかけるのではなく、醤油かけていただく。
これは私が子供の頃、翌日余ってやや硬くなったきなこの「おはぎ」をオーブントースターで軽く焼いて醤油をかけて食べるのを祖父に教わって、たちまち気に入ったのを我が家に持ち込んだもの。
今では妻も娘も違和感なくそうして食べているんですね。
妻実家に行った時に妻がそのことを普通に話して驚かれていたのでなんか面白いなと思った次第です(私自身はそれを一般的な食べ方ではないだろうと思っていたが、妻の方が当たり前のように受け入れてしまっていたので)。
そういう妻実家の親戚ではきなこの中に餡が入っている「おはぎ」を作るそうな。


そもそも「おはぎ」と言ったり「ぼたもち」と言ったり、種類もいろいろあったりして身近でありながら正体が知れぬ食べ物だなと思ったのでネットで軽く調べてみることに。
そしたら、それぞれ季節ごとに名が変わるもので、特に春と秋は咲く花にちなんで春が「牡丹餅」が「ぼたもち」に、秋が萩で「おはぎ」というのが一般的な説だとありました。
もっとも東京ではどちらの季節にも「おはぎ」というし、もち米や餡の材料によって違うとか、いろいろ説があるらしい。
それぞれ季節の上でのもっともな理由づけがあったようですが、季節に関係なく食べ物が手に入る現代ではわかりづらくなっていますね。
そうはいってもお彼岸になると両方の実家へ行って*1「おはぎ」をもらうことは季節の節目として欠かせない行事になっています。


季節によって名前が変わる風情の食べ物! おはぎとぼたもち(AllAbout)
wikipedia:ぼたもち

*1:どちらも近いので一日で済んでしまう

9期・53冊目 『蘆屋家の崩壊』

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、富士市では赤い巨人の噂に、榛名山では謎めいた狛犬に出迎えられ、やがて、日常世界が幻想地獄に変貌する―。鬼才が彩る妖しの幻想怪奇短篇集。

「反曲隧道」
猿渡と伯爵が出会うきっかけとなった、とあるトンネルで起こる怪異談。
隧道とはトンネルのこと。
隧道と書くだけで、狭くて見通しが悪くて、夜中に通ると何かよからぬものを見てしまいそうな気がするのは何故でしょうか。
もっとも猿渡にとって、伯爵との出会いは良きものであったと思いたいですが。


「蘆屋家の崩壊」
豆腐巡りの旅の途中、福井県の海沿いに寄った際に猿渡の大学時代の同級生である秦遊離子の実家が近くあることを思いだして訪ねることに。
秦の実家は蘆屋道満の末裔という伝承を持つ旧家であった。
旧家独特の習慣とかオチまで含めて、いかにも民俗的で面白い奇譚でした。


「猫背の女」
猿渡が伯爵に出会う前のエピソード。
コンサートで席を譲った縁で佐藤美智子という猫背の女と知り合い、そのお礼と称して映画に誘われる。
どうにも気が乗らなかった猿渡は次の約束をすっぽかすのだが、その日から彼の近辺で奇妙な出来事が発生する。
うん、これは(男は特に)怖い。ストーカー的なオカルトにとどまらず、猿渡自身の精神が蝕まれてしまっていたのかと思わせるふしがありました。


「カルキノス」
怪奇映画祭にゲストとして招待された伯爵および同行の猿渡は季節外れだが美味しい蟹が食べられるとの誘いに釣られてスポンサーである地元の富豪・郷原の家に泊めてもらうことになる。
その夜、奇妙な現象と殺人事件が起こる。
風変わりな蟹を使ったミステリ仕立て。
ところで豆腐にしろ蟹にしろ、食べ物の描写が旨そうで空腹時には毒です(笑)


ケルベロス
「カルキノス」で知り合った女優の落合花代にある相談を受けて彼女の実家に赴く二人。
彼女の双子の妹葉子は幼少の頃轢き逃げに遭い半身不随の身。それだけにとどまらず、彼女の生まれた村は20年以上祟られ続けているという。原因は彼女の家が双子が生まれた際の「お返し」をしなかったからというのだ。
黄泉の国に地獄の番犬ケルベロスという組み合わせが斬新。
その後が非常に気になるラストでした。


「埋葬虫」
カメラ巡りの際に旧友の伊予田と偶然再会した猿渡。彼の部下齋条は共に出張したマダガスカルで虫に寄生されてしまい余命幾ばくも無く、責任を感じた伊予田が看病しているという。
伊予田にカメラを託された猿渡は瀕死の齋条が見たがっているという森の写真の撮影を依頼されるが・・・。
特に虫が苦手というわけでもないのにこれにはゾッとさせられました。
虫とか植物とか、特別知能を持たない割には人智で計れない不思議がありますね。


「水牛群」
就職が決まって伯爵との縁が切れていた猿渡だが、会社で上司の不正の責任をなすり付けられてクビになってしまう。
心身衰弱の余り不眠症・食欲不振にも苦しめられ、伯爵に助けを求めた結果、再び彼の取材旅行に同行する事になる。
舞台となったホテルの妖しさに加えて猿渡の幻覚も混じって奇妙なストーリーとなっています。読んでいてまるで自分自身が体験しているような錯覚に囚われて重苦しかったです。


初めて読んだ作家なんですが、なんだか昭和の頃を彷彿させる懐かしい時代設定に独特な語り口で吸い込まれそうな感覚でした。
三十代になるが定職を持たない猿渡を主人公として、怪奇作家の通称・伯爵と共に各地を訪れて遭遇する怪奇譚・・・と言えるのですが、この猿渡がもともと怪奇、それも女難水難に遭いやすい体質なんでしょう。
会ったばかりの女性に妙に好意を寄せられるのは羨ましいが、トラブルに巻き込まれて溺れそうになったりするのは勘弁です。
猿渡自身が怪奇を呼び寄せてしまうというか、ふらふらとあっち側にいってしまいそうなのですが、伯爵がいるとすんでのところで呼び戻してくれるのが安心(出会う前の「猫背の女」ではまさに危ないところだった)。
まさに絶妙なるコンビと言えましょう。

函館旅行(9/13〜15)2

(昨日の続き)
二日目午後のコースは五稜郭です。
五稜郭自体は以前訪れたので、内部見学はやめました*1が、せっかくだから五稜郭タワーには上りました。
http://www.goryokaku-tower.co.jp/


五稜郭タワーから眺める函館山と市街地・湾内。

タワー自体は50周年ということで、前回来た時はこじんまりした印象だったのですが、今はすっかり綺麗になっていて、お店もいろいろあって広々としていましたね。
その次は有名じゃないけれど意外に訪れた人のレビューが好評だった函館市北洋資料館。
http://www.zaidan-hakodate.com/hokuyo/
北洋漁業に関する資料がたくさんありました。
入り口でいきなりシロクマやトドのはく製が出迎えます。
昔の漁道具、写真に説明パネル、船の模型などが多数展示している他、漁船体験に鯨漁に関するビデオなど。
ビデオはいかにも昭和に作られたっぽくて古いのですけど、それが逆に味があって良かったです。娘も飽きずに楽しんでいましたね。
人が少なかったせいか、職員の方が親切に解説してくれました。
二日目夜は函館山に登る予定なので、早めの夕飯ということで、今度は妻の希望で回転寿司(昼に海鮮丼食べたのに)ということで、五稜郭公園近くの函太郎。
http://www.kantaro-hakodate.com/
17時半にして結構並んでいたので人気なんですね。
いや実際美味しかったですよ。
ネタも大きくて(時間が早かったのもあって)普段10皿以上いくところが8皿でストップでしたから。
鮭も美味しかったけど、〆に食べた生さんまも他では食べられないほどの妙味だったなぁ。


夜は函館観光のメインと言っていい函館山からの夜景を見に行きました。
http://www.hakobura.jp/db/db-view/2010/10/post-2.html
夜間は頂上までマイカー規制がかかっているので、時間を取るならロープウェイ*2、安さでいったらバス。あるいはタクシー貸切となります。
うちはバスにしました。
駅前19:30出発とピークを過ぎたようで行き帰りは座れたのですが、やはり頂上の展望台は混んでいました。夜景を楽しむために周囲は暗いので、親子連れははぐれないようにしないと。
展望台上るのに待つのかと行列並んだら、それはロープウェイの列(その時20分待ち)だったと気づいて恥ずかしい思いも。
夜景自体は天候もよく、来た甲斐があったと思えるほど美しかったです。

しかし最上階の最前列では見るのに待たなきゃいけないし、押し合いへしあい状態でじっくり夜景を堪能することはできないですね。こればかりは時期を選ばないと。

三日目

最終日なので駅でいったん荷物を預けた後、市電*3で元町エリアに移動です。
事前に観光スポットを調べて一番に行くことにしたのが旧函館市公会堂。
http://www.hakobura.jp/db/db-view/2011/04/post-59.html
9時からオープンしていることと、市電停留所から離れているので、ここから駅方面へ戻るように移動していこうと考えたので。


お洒落な洋館で、外観も内装もなかなか見ものですが、なんといっても娘がいたく興味を示したのがハイカラ衣装ですね。
家族揃って申し込んでいた人たちもいましたが、さすがにうちは娘だけお願いしました。
ちらっと貸衣裳を見たけど女性用は子どもから大人まで色とりどりのドレスが用意されてているのに、男性は黒のタキシードだけですから…。
やはりこれが目的で来る人が多いみたいで、9時過ぎですでに待ち状態。
ヘアメイクが追加料金で頼めます、服装に合わせて髪型もそれらしくしてもらった方が見栄えいいんでしょうな。着替え後、20分間自由に館内を移動できます。
まるで舞踏会に出るような装いで子どもも大人びて見えましたねー。

館内のあちこちを回って写真撮影しました。高台にあるだけにバルコニーからの眺めも良かったです。


次に目指したのがこれも娘の強い希望で、はこだて明治館内にある手作りオルゴール工房。
http://www.hakodate-factory.com/meijikan/

曲と容器に店内にあるガラス細工を組み合わせて好きなオルゴールを作れるというのです。
行かなかったけど2階はテティベアやジブリの展示もしているらしい。

↑2階にトトロが横向いてます。
とまぁこ本日のメイン二か所は娘が中心で妻が付き添い、待ち時間が長かったので私はほとんど別行動取って一人で見物していたのですけどね。

↑鋭意制作中。
こうしてできあがったオルゴール(左に写りこんでいるのは私が買ったイカのストラップ)。

イカラ衣装とこのオルゴールは娘にとって函館の良い思い出に残ることでしょう。
ちょうどお昼どきになって食事処を探すも時間的にどこも混んでて、たまたま前日のお昼と同じきくよ食堂のベイエリア店があまり待たず入れそうなのでそこにしました。
朝市の方はいかにも昔ながらの食堂でしたが、こちらは店内も広くてファミレスに近いですね。メニューも丼もの以外に豊富に選べます。
続けて生ものだったこともあって、私は外食では珍しく天ぷらを選びました。
蟹の天ぷらは初めて食べましたが美味しかったです。

まだ娘の友達へのお土産買わなきゃいけなかったので、興味があった赤レンガ倉庫群に行ってみたのですが、ちょっとこれは失敗だったかな。
倉庫が複数あって広い(かつ混んでる)ので探すのに一苦労。
ショッピングモールとして様々な店舗が入っているので、単にショッピングと食事を楽しむのならいいのかもしれない。あと事前に目当ての店も調べておかないとね。
結局はこだて明治館まで戻ってお土産を買いました。
もう一箇所くらい寄りたかったのですが、帰りの特急の出発時間から逆算するとどうにも厳しくなっていました。ハイカラ衣装の関係で予想以上に時間取られたのが想定外でした。
個人的に行ってみたかったのが、函館市北方民族資料館、旧相馬邸などです。こういう場合、父親の希望が後回しになるのは仕方ないことです・・・。
西波止場にて函館の港に別れを告げました。


今回の旅行の総括としては、3回目ではあっても車で初めて訪れたところあり、同じ場所でも様子が変わっていたり、変わらない魅力もあり、充分楽しめました。
ただやっぱり連休の観光地は混む!
うんざりするほどの混雑ではないのですが、団体客とかちあっちゃうと面倒かな。
もし次来れるとしたら平日にしたいなぁ。それはそれで休業日のチェックは必要ですけどね。
天候には恵まれた分、市街を歩いていると暑くて、日中は埼玉とあまり変わりなかったかな。恵山とか大沼はさすがに涼しかったです。

*1:中に新しくできた函館奉行所は気になったが

*2:実際、行楽シーズンでは乗るのに何十分も待ったり登山口から歩いたりバス使うことを考えたらあまり時間短縮にならない

*3:1回あたりの乗車賃は210〜240円。3回以上乗る場合は一日乗車券(600円)がお得だし小銭を用意する手間が省ける

函館旅行(9/13〜15)1

以前から娘が小学生のうちに一度は北海道に行きたいねと話していたこともあって、今年行くことになりました。
個人的には学生時代の一人旅と結婚後と過去2回行ったこともあって、同じ北海道なら札幌や富良野も行ってみたかったのですが、まぁ色々と事情あって函館に落ち着きました。
娘が生まれて以来、泊りがけの旅行というと必ず車を利用していたのですが、もし自家用車を利用したいのならフェリーを使うしかなく、そうするとかなり期間を取らなきゃいけません。
飛行機と新幹線で検討した上で、交通費が節約できるJRの駅レンタカーを利用しました。
8月に北海道に行くには何かと料金高めなので9月の連休中にしたのですが、二週間前に電車の切符を買いに行ったら、同じことを考えている人は多いようで座席も結構うまっていたようでした。*1

一日目

そうして出発した13日朝、今まで車の旅行ならば忘れ物したって気軽に戻るし時間の融通がききますが、久しぶりの新幹線、しかも指定席なのでそうはいきません。そのへんが気を使いますね。
新幹線はやぶさ新青森駅まで行き、そこで特急スーパー白鳥に乗り換えて津軽海峡を越えて函館まで行きます。

電車の旅行と言うと、昔は青春18切符にてひたすら鈍行で行ったので、時間はかかるけど旅の情緒みたいなものがありました。
新幹線はえらく早く行ける分、はるばる遠くまで来たという感じはあまりしないですね。
ちなみに前に函館来た時は寝台列車だったので、あまり景色を楽しむことはできなかったのは同じでしたが。


到着が13時40分頃だったので朝市まで行って遅めのお昼。
この時ばかりは私の希望が通ってラーメンになりました(笑)
近いところで「かもめ」に入ったのですが、ここは私が初めて函館に来た時に朝ラーメンを食べたところと同じだったと思うのですね。

↑函館と言えば塩ラーメン。
かもめ 食べログ
偶然ながら、約20年ぶりの再会に内心感慨深いものがありました。


まる24時間レンタカーを借りることにしたので、今回の旅では市街地散策は二日目午後〜三日目にして、初日と二日目午前中は車でしか行けないようなところに。
それで私が選んだのは亀田半島東端にある恵山(えさん)。
http://www.hakobura.jp/db/db-view/2009/03/post-16.html
車で火口付近まで行けること、そして恵山岬からの眺めが素晴らしいことから行くことにしたのですが、いかんせん函館駅前から遠かった。
事前に見たホームページには「JR函館駅から車で1時間」とあったのですが、実際は距離にして50km以上あるのでさすがに無理です。
道はガラガラだったのですが、やっぱり1時間30分くらいかかりました。ひたすら海沿いの道をドライブするのはなかなか気分良かったですけどね。
あと予報では曇り後雨でしたが、函館着いた後はほぼ降られなかったのは幸いでした。
すでに4時になっていたので帰りの時間を考えると二か所行くのは無理ということで、恵山岬の灯台資料館(通称ピカリン館)を訪れました。
http://www12.plala.or.jp/k-hirao/kankou/26_19.html

一階にあった灯台の模型。

小さいながらもなかなか見応えある施設で、もっと早い時間に来れば手作り体験ができたようです。
でも娘は近くにある恵山灯台公園で貸切状態で遊べたのが一番楽しかったのかも(笑)
こちらが恵山灯台


初日はホテルの浴場ではなく市内の温泉に浸かろうということで、湯の川温泉も検討したのですが、結局選んだのは谷地頭温泉(前に寝台列車で来た時の朝に入ったことあったので)。
http://www.hakobura.jp/db/db-onsen/2010/07/post-1.html
地元の人も通っているというだけあって入浴料も休めですが、とにかく広くてくつろげるのがいい。*2
しかしなんだかんだ言って出たのが夜9時近くになってしまって困ったのが夕飯。
予定では妻と娘の希望で回転寿司だったのですが、この時間ではほぼ終了。
ホテル付近で営業しているのは居酒屋くらい。そこで本当は翌日の昼に行こうかと思っていた函館ご当地ハンバーガーショップであるラッキーピエロにしました。
http://www.luckypierrot.jp/
ハンバーガーショップと言ってもファミレス同様のメニューもあり(店舗のよる?)、私たちが食べた五稜郭近くの店もそうだったので夕飯にしても問題なしです。
いつも旅行では観光ホテルや旅館ではなくビジネスホテルを選んでいて、朝食以外は外で食べているので時間に縛られなくていいですが、観光地では店を探すのがちょっと大変ですね。
そんな感じで一日目が終わりました。

二日目

一番に目指すは大沼国定公園です。
http://www.onuma-guide.com/
駒ヶ岳の麓に広がる、大沼小沼など複数の湖がある広大な自然公園です。
遊覧船に乗るか手漕ぎボートにするか迷ったのですが、見た感じすごく広いので手漕ぎで回るよりも遊覧船の方が景色が堪能できると思って乗り込みました。
駒ヶ岳はちょっと頂上に雲がかかっていましたね。

南に横津岳が見える。

遊覧船は30分ほどで大沼の半分と小沼を巡って回ります。空も晴れて、風が気持ちいいくらいでした。
次第に雲が晴れて頂上付近がよく見えました。

船を降りた後、少し周辺を散策。
千の風になって」の記念碑があるとか。本当にそれだけですけど。

10時くらいに観光バスの団体が続々と来たので、早めに行って正解でしたね。
時間があればレンタサイクルで回っても良かったのですけど。


その次に行ったのは函館市街への道中にある昆布館。
http://www.konbukan.co.jp/information/hokkaido.html
昆布漁に関する資料館および昆布製品が多数販売しています。
試食もたくさんできます(笑)
うちはここで主なお土産を買いました。正直昆布商品が多彩すぎて迷いほどです。
そこから市街地に向かって朝市を巡ります。
駐車場正面のどんぶり横丁で心揺れつつもきくよ食堂で海鮮丼を食べました。
私が頼んだのは三食丼(いくら・うに・ほたて)。

やっぱり海沿いの観光地で魚介類生ものは外せないよなー。
海無し県出身だけにそういう執着があるのは仕方ないです。
(続きは明日)

*1:行きは良かったが、帰りの特急の座席はバラバラになってしまった

*2:タオルやシャンプー類は有料なので持参するのが吉

食事の量に関する考え方の違い

土日祝は妻がパートに出るので私が食事などの家事を行い、それ以外の平日は妻が家事を行う、というのが娘が生まれて半年後くらいから定着した我が家の習慣。
食事に関してそれぞれの好みや得意不得意でいろいろと違いは出てくるのだが、以前から感じていたのが量に関する考え方の違い。

私はなるべく人数分ちょうどになるように作る方。
まぁご飯はおかわりや翌朝の分も考えて炊くとか、材料の関係でおかずを多く作ってしまうことは時々あるが。
それに対して妻は意図しておかずや汁類も多めに作っているらしい。それ絶対に多すぎて余るだろう?ってくらいたくさん作る。
しかもカレーのように始めから二日分作るというわけではなく、次の日は別のおかずを用意するが、前日のおかずが残っているから一緒に食べようってなる。そして結局また残る。
以前、指摘した時に返ってきたのは「だって足りなくなったら嫌だから」という答え。
要は食事を提供する側として、「もっと食べたい。足りない。でも食べるものが無い!」という状況になるのだけは避けたいらしい。
実際のところ、おかずが足りなくなってもご飯さえあれば適当に食べられるんだが。
むしろ余ったおかずや汁物を翌日以降に食べきれずに結局捨ててしまったりすることを何度か目にしているので、その方がもったいないと思う。

考えてみれば、妻の実家に行って食事をいただく時はお盆や年始で集まる時だけでなく、いつも食べきれないくらいの量が出てくる。
そりゃ客に対するご馳走と家庭料理は違うのだろうが、もともと妻の実家はおかずを多めに作る傾向があったのかもしれない。
生まれ育った家での食習慣というのは、良くも悪くも深い影響を与えるものだから。

そう考えると娘が将来結婚してどういう家庭料理をすることになるのか、そのあたりの責任は私たちにあるわけで。
手伝いはよくしてくれるので、少なくとも料理は好きにはなりそうな気がするが、同時に食いしん坊(炭水化物大好き)のまま大きくなりそうな気がしないでもない。

9期・52冊目 『天冥の標8 ジャイアント・アークPART1』

内容(「BOOK」データベースより)
「起きて、イサリ。奴らは撃ってきた。静かにさせましょう」―いつとも、どことも知れぬ閉鎖空間でイサリは意識を取り戻した。ようやく対面を果たしたミヒルは敵との戦いが最終段階を迎えていることを告げ、イサリに侮蔑の視線を向けるばかりだった。絶望に打ちひしがれるイサリに、監視者のひとりがささやきかける―「人間の生き残りが、まだいるかもしれないのです」。壮大なる因果がめぐるシリーズ第8巻前篇。

甲殻化により強力な武力と体を手に入れた救世群の民ですが、その副作用として怒りに我を失うと凶暴化して敵味方に関わらず攻撃してしまう。
その発作が現れた状態が咀嚼者(フェロシアン)と呼ばれるのですが、進行を抑えるために異星人の技術によって編み出したのが冷凍睡眠。
囚われのアイネイア・セアキを助けてこっそり逃がしたこと(前々巻)でイサリは救世群の権力を握った妹ミヒルに捕らわれて強制的に眠らされたわけですが、その長い眠りから目覚めたことで新たな章が始まります。
その頃、前巻の経緯を経て、惑星セレスの地下世界ブラックチェンバーで避難生活を送っていた人々の子孫は植民地メニー・メニー・シープを称した地で暮らし、技術や文化の断絶がありながらも歴史を刻んでいました。
奇しくも同じ地に根を下ろした救世群と生き残りの人類の尖兵よる戦いは地下深くで行われており、その事実を知るのはごく一部に限られていました。


未感染者の人類は敵として徹底的に掃討すべきとするミヒルに対して、できることならば協調する道を選びたいイサリ。
ヒルが皇帝として権力を持ち、自身はその駒に過ぎないことに絶望するイサリは密かに協力者を得て、脱出と人間たちに迫りくる脅威を知らせる道を選びます。
困難な脱出行の末にセナーセー市にたどり着いた後の顛末は1巻でも書かれた通りですが、お節介な観察者たる”ダダー”と地下で邂逅したカルミアンたちによって知識を補完したイサリは配電制限を機に領主ユレイン三世と人民が対立する状況の難しさに挫けそうになるばかり。
ユレイン三世の真意を見抜くもカドム・セアキらを説得する術を持たないのでした。


そのまま1巻への成り立ちを俯瞰したかのような序章であり、ようやくここにきて明確に繋がったと思うと感慨深いですな。
1巻でセナーセー市に登場したイサリと6巻PART1で登場した救世群のイサリ。
少しずつその繋がりは示唆されていましたが、そこに至るまでに激動の歴史があり、長い時を経て目覚めたイサリ視点で綴られる本巻によって、その複雑な背景が明らかになりました。
その人間離れした外見と力に反して中身は16歳の少女だというアンバランスさが1巻でのちぐはぐな印象に繋がっていたのだなぁ。
ラゴスを始めとするラバーズや石工(メイスン)として人間に奴隷の如く使役されていたカルミアンたちも今までの経緯があってこそ、メニー・メニー・シープでの立ち位置が理解できましたね。
そして久しぶりのエランカ議員の登場。
最初読んだ時こそ頼りなさげでしたが、すっかり覚醒してリーダーとしての貫録さえ感じます。
ネタバレだけど、いきなり主人公死ぬのか!と思われたカドムも一命を取り留めたみたいだし、良かった良かった。
10巻構成ということで、ここで1巻最後の顛末が明かされた後に終盤に突入してしまうのかと寂しさもありましたが、3部構成なのでまだまだ楽しめそうです(笑)