『天気の子』 / 『ペット・セマタリー』

新旧対照的な2本の映画を観ました。

『天気の子』

言の葉の庭』『君の名は。』に続いて新海誠監督の最新作品です。
始めに書いておきますと、前作『君の名は。』ほどの衝撃は受けませんでした。
君の名は。』は終わった直後にもう一度観たい気持ちが湧いてきたのに対して、『天気の子』はちょっと薄いというか、もう一度観ようかどうしようか迷っているところです。*1
決して悪かったという意味ではないです。
今回のテーマは天気ということで、映像の迫力と美しさには前作以上に圧倒されました。
天気とは人間がコントロールできる事象ではなく、うつろいやすくて、それでいて人々の生活に密接に関係していることを改めて考えさせられます。
ボーイ・ミーツ・ガールのボーイ(穂高)のひたむきさ。*2 ヒロイン・陽菜の可愛らしさ。それに主役2人に負けないくらい身近なキャラクターも良かったです。
特に小学生らしからぬ大人びた凪(陽菜の弟)、冒頭で穂高と出会った須賀圭介と夏美の叔父・姪コンビ。その3人がいたからこそ、主役2人が輝いたと思います。
クライマックスで穂高が陽菜に会いにいくべく、廃ビルを駆け上がっていく様は胸アツでした。

新海誠監督は主役男女に大きな障害を持たせるのがお決まりらしく、『君の名は。』では時間と距離と記憶の消滅、『言の葉の庭』では立場と年齢差(プラス天候か)でした。
本作においては陽菜の神隠しに加えて穂高が警察に追われることになりました。
その逃走する場面が盛り上がりに彩りを与えていました。追う高井と安井の両刑事のキャラも立っていましたね。
ただ、ストーリーのテンポに優れていて、最後まで時間を忘れるくらいに没頭してしまった前作と比べると、本作は後半で若干の間延び感があったのは否めないです。
100点満点でいえば、『君の名は。』が95点くらいで、『天気の子』が85点くらい。
もっとも、一緒に見ていた娘は私とは逆の意見でした。
そのあたりは個人の感覚の違いもあるでしょうね。
ちなみに『君の名は。』の主要キャラ5人が登場することは前もって知っていましたが、穂高との会話シーンがあってわかりやすい立花瀧宮水三葉はともかく、テッシー(勅使河原 克彦)とさやちん(名取 早耶香)は後ろ姿ということも確証がもてませんでした。エンドロールでやっぱり出演していたことに気づけましたが。
四葉も一瞬でしたが、髪型で気づけました。
そういえば、終盤で陽菜の実年齢が判明。穂高は年下じゃなくて逆に年上なのがわかりましたが、陽菜・凪の姉弟にいつまでも頭が上がらないような気がしますね(笑)





『ペット・セマタリー』

スティーヴン・キングの原作を読んだ時の記事を探してみたら、もう10年前になりますね。
『ペット・セマタリー』(上・下)
小説の刊行、映画公開ともに1980年代なので、車や電話など時代がかった感じはします。
あらすじとしては原作をほぼ踏襲しているようで、都会(シカゴ)から田舎の一軒家に引っ越してきたルイス(父)・レーチェル(母)、それにエリーとゲージの姉弟の一家です。
向かいのジャド以外はすぐ見える範囲に家がないくらいのど田舎のようです。
しかし、2軒の間を走る道路は近くにある会社のトラックが猛スピードで走るのに、ブロックなど何もないのでかなり危なっかしいです。
実際に町では飼っていた犬や猫は度々轢かれて死に、森の中には共同のペット墓地*3があるという。
ペット以外に小さな子供だって轢かれる可能性があります。
現に危ないところをジャドが救っているし。
早くも冒頭から危うさを感じてしまいましたね。
せめて庭の前を囲うように柵を作らないのかと思うのは時代と環境の違いでしょうか。

結果的に飼い猫が轢かれて死んでしまい、可愛がっていたエリーに同情したジャドがペット墓地のさらに奥にある秘密の場所に死骸を持たせたルイスを案内する。
それが悲劇の始まりだとは思わずに…。

死をなかったことにしたいという気持ちはわかります。
ましてや子供を失った親の立場であるならば。
ただ、最初に猫を蘇らせた(生き返らせたとは思えない)ら凶暴化していたこと、ジャドが語った過去のケースから、本来とはかけはなれた存在に化けてくるのはわかったはず。
それでもタブーを冒してしまうのが人間の弱さなのでしょうか。
心理描写という面では小説の方がじっくりと描かれているのですが、映画の中でも一見冷静そうに見えるルイスが徐々におかしくなっていく様は伝わってきました。
蘇ったゲージの暴れっぷりがかなりのもので、まさにホラー映画ならではでしょうか。
急患で結局死んでしまったはずのヴィクターが唐突に起き上がってきたり、その後も度々出て来るのには驚きを通り越してユーモアさえ感じますが、実は彼は忠告を与える立場。それにエリーも夢でルイスが悪いことをしようとしているのを感じて幾度も止めようするあたりが健気です。
ルイスが残された家族を大事にする気持ちが強ければ悲劇は回避できたのに、目の前で息子を亡くしてしまった悔恨が強すぎたのかと観た後に思いましたね。
やはり、怖いというより悲しい物語でした。


実は2019年にリメイク版が作られており、そちらは後半の展開がだいぶ違うようです。
それはそれで期待できそうなので、いつか観てみたいと思います。

*1:と書きつつ、やっぱり観てみるつもり。

*2:家出の理由は明かされていない。島では顔に傷を負っていたから喧嘩やイジメの可能性も考えたけど、行方不明届が出されたことに驚いたあたり、家族との確執かな。

*3:"PET CEMETERY"だが、子供が書いたので綴りを間違えて"CEMATERY"になっている。