- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1989/08
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
都会の競争社会を嫌ってメイン州の美しく小さな町に越してきた、若い夫婦と二人の子どもの一家。だが、家の前の道路は大型トラックがわがもの顔に走り抜け、輪禍にあう犬や猫のために〈ペットの共同墓地〉があった。しかも、その奥の山中にはおぞましくも…。「あまりの恐ろしさに発表が見あわせられた」とも言われた話題作。
いくつかの衝突や悩みはあるものの、前半で家族の幸せをじんわりと感じさせられるほどに、唐突に訪れた長男の死による落差はすさまじい。
自分自身が子を持つ親だからわかるけど、親が子を失うというのは非常に恐ろしいこと。それだけに父・ルイスの喪失感と悔恨、母・レーチェルの錯乱とも言える描写は真に迫り胸が痛いほどです。本作は著者・キングの体験に基づく部分があるというのもうなづける話です。
実は中盤に長女・エリー*1が可愛がっていた猫のチャーチが交通事故で死に、老友・ジャドの手引きによってペット霊園の奥にあるインディアンの埋葬地に埋めると、そこの不思議な力によって復活するさまが描かれています。
しかし復活したチャーチは生前の面影はなく、うつろな目と猫らしくない動きに死臭を匂わせる忌まわしき存在に変わってしまっています。
もしその場所に人間を埋めた場合にどうなるか?
息子のゲージを失って悲しみに暮れるルイスの思考はそこにたどり着きます。
息子を取り戻せるかもしれないという幻想と、残されたエリーのために現実的に生きねばならない気持ちの狭間で葛藤するルイスの心境はとても痛ましく感じます。
過去を知るジャドによる説得。何かを感じてそばを離れることを嫌がるエリー。しかし何かの力が動いたとしか言えないように息子の遺骸を運び出したルイスはついに霊園の奥に向かいます。決して良い結果が待っていようとは思えないながらもルイスの感情を否定できない自分がいます。
美しいメーン州の田舎風景に家族愛と年の離れた隣人との友情。これだけ素晴らしい要素を描きながらも全てを破滅へと導くラストが恐ろしく、そして切ないです。
備考:タイトルについて(wikipedia:ペット・セマタリーより)
原題の「Pet Sematary」は「ペット霊園」の意味であるが、英語の正しい霊園のスペルはCemeteryである。これは、「(本作品に登場する)ペット霊園の入り口には、幼い子供の書いた看板がかかっているが、"CEMETERY"を"SEMATARY"という子供らしいスペルミスをしている」と描写されていることから、そのスペルミス表記を原題として採用したものである。
*1:正式名はアイリーンらしく、祖父母もそう呼んでいるが、主人公のルイス視点ではほぼ愛称のエリーとなっている