10期・53冊目 『感染列島 パンデミック・イブ』

感染列島 パンデミック・イブ

感染列島 パンデミック・イブ

内容(「BOOK」データベースより)
約10年前にその脅威が確認されたH5N1鳥インフルエンザ―かつてない強毒性のウイルスが変異を遂げて人を宿主としたとき、人々は多臓器不全を起こして死に至る恐怖のパンデミック(地球規模の爆発的感染)に襲われる!映画「感染列島」につながる第一のパニックは、決して近未来のフィクションではない。まもなく起こる現実だ。

このタイトルを見ればほとんどの人が何らかの伝染病が日本中に広がってしまうパニック小説を思い浮かべるでしょう。
そのままずばり『感染列島』という映画もありましたし。
後から知って映画のノベライズかとも思ったのですが、ほぼ無関係の内容ですね。チョイ役で登場する救急救命医が映画の主人公と同じ名前なだけ。
図書館で見つけてタイトルで興味を覚えて借りただけで事前知識は無かったのですが、まさにタイトル詐欺な内容でした。
内容としてはざっくりこんな感じ。

  • 沖縄で鳥→人に感染するH5N1鳥インフルエンザが発生。感染者の内3名のアメリカ人学生が死亡。すわパンデミックかと騒がれたがすぐに沈静。厚生労働大臣として次期総理を目指す政治家はこれを機会に名を上げようと奮起するも空回り。
  • イケメン作家が西洋美術に詳しい美人編集者との共同作業*1で名画にモチーフにした小説を発表→大物評論家にボロクソに貶される。
  • 失意の中から復活を目指そうと作家は恋人と別れて怪しい集会に参加。それは「叫び」で有名なムンクに縁のあるノルウェーの地だった。
  • 突然帰国した作家だが、凄まじい症状を起こして死亡。短期間で劇的に症状が進む未知の伝染病か!?でも感染し死に至るのはなぜか彼の血縁だけだった。


最後の方でH5N1が全国的に勃発し、おざなりにタイトルに沿うようにしているようですが、肝心のパンデミックについては登場人物の言葉を借りた概要説明と警告にとどまるのみ。
作家が罹った新たな複合ウイルスについては確かに恐ろしくもあり、美術品を使ったバイオテロとしてはアイデアものですが、特定の家系のみ効果あるなんて設定は非現実的では?
パンデミックを扱いながらもパニック小説ではなく、ミステリなんだか恋愛なんだか狙いどころがぼやけていて、よくわからないまま終わってしまいました。

*1:文字通り二人は交際→結婚に発展するかに見えて破綻