8期・44冊目 『ビッグドライバー』

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
小さな町での講演会に出た帰り、テスは山道で暴漢に拉致された。暴行の末に殺害されかかるも、何とか生還を果たしたテスは、この傷を癒すには復讐しかないと決意し…表題作と、夫が殺人鬼であったと知った女の恐怖の日々を濃密に描く「素晴らしき結婚生活」を収録。圧倒的筆力で容赦ない恐怖を描き切った最新作品集。

暴行が偶然によるものではなく卑劣な親子によって計画されたもので、自分はまんまと罠にはまり、危うく殺されかけたのだと知った女性作家が復讐を企てる「ビッグドライバー」。
夫の秘密の隠し場所から見知らぬ女性のIDカードを発見し、ネットで検索してみた結果、連続強姦殺人犯による被害者と判明。調べれば調べるほど疑いが強まる。
長年夫婦として寄り添い、良き夫を演じてきた裏で残忍な犯行を重ねてきたというのか?「素晴らしき結婚生活」
『Full Dark, No Stars』として昨年刊行された中編4編の後半にあたるそうです。


理不尽な暴力に直面した二人の女性に共通するのは警察に通報するのではなく、自力で解決しようとしたこと。
ごく普通の女性がなぜそうせざるを得なかったのか?
それはメディアに取り上げられ、世間の注目を浴びることを恐れたから。
被害者であるテス(「ビッグドライバー」)とて例外ではありません。
ましてやベンチャー事業を始めたばかりの長男と結婚を目の前にした長女を持つダーシー(「素晴らしき結婚生活」)にとって、夫が連続強姦殺人犯であることが知られるのは破滅そのもの。
かくしてテスは護身用の銃を持って、ネットで調べた加害者の家へ。
ダーシーは表面上は今まで通りの夫婦を演じるわけです。


まぁ正直言いますと、「ビッグドライバー」は心理描写が冗長で読みにくい割にストーリーに捻りもなくつまらなかったです。
「素晴らしき結婚生活」の方がまだ読ませるものありましたね。夫が殺人鬼であったことを知ったばかりでなく、今後も夫婦として生活を続けなければいけない妻の恐怖は計り知れないものがあったことが伝わってきます。
でも先日読んだばかりの『恐怖の誕生パーティ』と比べてしまうとね…。
実は夫を調べていた元刑事を登場させたラストは蛇足じゃないかなぁと。
2000年代以降のキングの作品は携帯電話やネットなど現代的なツールを駆使してはいるものの、昔の作品に比べると夢中になって読めるほどではなくなりましたね。残念なことですが。