10期・67冊目 『スリーパー』

スリーパー (単行本)

スリーパー (単行本)

内容(「BOOK」データベースより)
殺人罪で米国の刑務所に服役する由良は、任務と引き替えに出獄、CIAの工作員となる。やがて秘密工作員として活動をはじめた由良のもとに、沖縄でのミサイルテロの情報が。中国、北朝鮮、そしてアメリカ。各国の思惑が絡み合い、行き着く先は…由良は日本を守るため、死地に赴く…そしてあの伝説の工作員が!最新のハイテク情報と国際情勢をもとに繰り広げられる国際諜報戦争。

中国が太平洋方面進出の足がかりとして南シナ海東シナ海に浮かぶ島々に触手を伸ばし、北朝鮮では新たな独裁者となった金正恩が体制固めを図る。
一方アメリカは急激な変化を避け現状維持を望み、その一環としてCIAでは現地の工作員として殺人罪で刑務所に服役していた由良をリクルートします。
まずはシンガポールにて北朝鮮高官に接触して協力者(スリーパー)として仕立てあげることに成功し、内部情報を得ることに成功。
そんな時にSAM(空対地携帯ミサイル)のバッテリーが日本国内に密かに持ち込まれていたことが発覚、急きょ由良は対策チームの一員として日本へと向かうのでした。
果たしてSAMを持ち込んだのはどこの国か?そしてその目的とは?


21世紀の緊迫した東アジア情勢を舞台に新たにCIAのエージェントとなった日本人を主人公にした国際サスペンスであり、何かと問題を抱えている沖縄の米軍基地を巡って日本国内に潜伏した諜報員たちの攻防を描いています。
ミサイル一発で米軍基地の存亡にかかわること、ひいてはアメリカの戦略に響いてくるという点がいかにこの問題の危うさを醸し出していますね(それにしても日本の当局が最初から最後まで蚊帳の外だというのが情けない)。
ストーリー自体はよく考えられていると思います。
ただ由良のターゲットとなった北朝鮮高官にしても、中国のエージェントにしてもあっさり堕ちてしまい、由良の行動がスマートに行き過ぎるのが拍子抜け。
そしてちょうど東日本大震災後にあたり、その対応や国防関連に関して登場人物の台詞を介した政治談議が何度も繰り返されるのがくどいように思えます。
テーマの性質上、時事関連を取り入れるのは仕方ないとしても、物語のバランスを考慮してほしかったですなぁ。
さすがに終盤のアクションに関してはさすがに緊迫感あって良かったです。
ちなみにエピローグでは冒頭に登場した男の名が明かされるのですが、著者の初期代表作において渾然と輝くピカレスクヒーローであったあの男が生きていたという顛末でびっくり。
もしかしてこのシリーズ続くのかな?