30冊目 『アルスラーン戦記14 天鳴地動』

内容(「BOOK」データベースより)
シンドゥラ国王・ラジェンドラは空城となったパルス国の要衝・ペシャワール城に入った。押し寄せてきたチュルク軍と一触即発かと思われたそのとき、魔軍が襲来する!未知の脅威にさらされた両軍の運命は!?そして、魔軍を率いるイルテリシュの狙いは?ミスル国を掌握したヒルメスは南方へ進軍し、蛇王ザッハークの完全復活をもくろむ魔道士たちが暗躍する。パルス国土の再建に邁進するアルスラーンにも、兇悪なる魔手が迫る!!超絶ヒロイック・ファンタジー小説、驚愕の書下ろし最新作、第14弾!

以下、内容箇条書き。

  • 空城となった要衝・ペシャワール城に一足先に入った国王ラジェンドラ率いるシンドゥラ軍、それに近くまで迫ったチュルク軍。そこに魔軍の眷属が空から襲来し、両軍ともに大損害を受ける。城内にいたために比較的軽微だったシンドゥラ軍は一旦自国領に退き、ラジェンドラは今後の戦略を検討する。
  • 魔人イルテリシュは己の野望を果たすために魔軍を率いてチュルク国王宮を奇襲、見事乗っ取りを果たす。最終目標(パルス征服)に向けて足元を固めようとするが、思い通りに動かないイルテリシュに対して魔道士グルガーンは何やら思案を図りめぐらす。
  • ミスル国を掌握したかに見えたヒルメスだったが、南方で蜂起した軍に敗れてしまい、再起を図ってギスカールが治めるマルヤム国を目指す。
  • パルス国東部ではデマヴァンド山を中心として度重なる天変地異や魔軍の眷属が跳梁するために国土が荒れ、大陸行路が寸断されていた。交易による収益によるところの大きいパルス国の国王アルスラーンとしては早急な対応を図ろうとするが、謀ったように魔軍の妨害を受けてしまい・・・。


6年ぶりの新刊です!
前巻の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/goldwell/20081022/1224683347
内容的にはクライマックスに向かって主にパルス国外の勢力の動きがダイナミックに描かれており、6年間のブランクを感じさせなかったです。
実はまだ完全覚醒していなかった蛇王ザッハークはともかく、ヒルメスやイルテリシュらの敵役にも転機が訪れましたが、次巻で大きな展開が待っているような予感がします。
その一方でやはりというか、今回もパルスの十六翼将が次々と斃れてしまうのですが、amazonレビューで多く指摘されているようにその死に疑問が残る点もありました。
例えば壮絶な戦闘の末の戦死ならまだしも、地震による落下物による圧死ってどうなんでしょうか。
現実の歴史では戦死よりも病死や事故死の方が多かったのでしょうが、ヒロイックファンタジーとしては不満が残ります。
またイルテリシュに率いられる前はあまり戦略的な行動を取ることの無かったはずの魔軍の眷属が、アルスラーンが海路重視に動いた機先を制してギランの商人を襲ってすり替わったり、海路編成の重要人物であるグラーゼを狙うあたりは周到すぎるし。
そもそも蛇王覚醒前にしてパルス王宮を直撃するくらいの大地震を起こせるくらいなら、迂遠な手法取る必要ないんじゃないかとも言える。
どうも強くなりすぎたパルス軍に対して、もはや他国軍では相手にならないから人智を超えた存在によって都合よく削られている感があります。
敵味方双方の描写があって智謀をふるった戦場の駆け引きがうかがえる国家同士の戦いと違って、魔軍との戦いは唐突すぎて面白みに欠ける気がしちゃうんですよねぇ。