7期・80冊目 『ZOO 2』

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集その2。目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など、いずれも驚天動地の粒ぞろい6編。文庫版だけのボーナストラックとして、単行本に入っていなかった幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別収録。

「血液を探せ!」
ある日目覚めた資産家のワシ(64歳)は脇腹を包丁で刺されて血まみれであることに気付く。
脳の障害のせいで痛みを感じることはないが、このままでは死に至ることは自明で、急ぎ息子たち(ナガオ、ツグオ)と妻(ツマ子)に輸血用の血液を探すように命じるが…。
「冷たい森の白い家」
馬小屋に住むことを強いられていた主人公は馬に蹴られたために顔が凹んでいる。
そのため街では受け入れられず、森に行きそこでかつて住んでいた馬小屋と同じような小屋を作ろうとする。殺した人の死体を使って。
「Closet」
義弟のリュウジに隠していた過去を知られてしまったミキ。
灰皿で殴られ死んだリュウジをクローゼットに隠し失踪したように装うが、次の日から家族のもとに犯行を仄めかす謎の手紙が届くようになる。
「神の言葉」
ある日突然、言霊を現実にする能力を手に入れた「僕」。気に入らない相手はその力で思いのままに操りやりたい放題だが、唯一苦手なのが対照的な性格の弟であった。弟への憎しみのあまり、「首が落ちる」というとんでもない言霊を発してしまった。
「落ちる飛行機の中で」
大受験に失敗し続けた青年によってハイジャックされた飛行機。
その中には酷い目に合わせた男に復讐を誓った女と、安楽死による自殺を考えていたセールスマンがいた。
「むかし夕日の公園で」
公園で一人ぼっちで遊ぶ僕は、砂場がどれくらい深いのか試そうと手を突っ込んでいた。
そしてある時、指先に何かが引っ掛かった。


なんだか気になったので『ZOO 1』の続きを読んでみました。
この中で一番気に入ったのは「落ちる飛行機の中で」ですね。
ハイジャックされ墜落まで残りわずかな中で場違いとも言える会話を続ける男女。
本来ならば死が迫り緊迫感溢れる場面をユーモラスに描いています。
ハイジャック犯の最後、そしてラストの女性のつぶやきがとても印象深かったです。
最後の「むかし夕日の公園で」も子供の好奇心とこの世のものでない存在への恐怖がマッチした優れたショートショートと言えます。
一見ミステリ風なのは「血液を探せ!」と「Closet」。
もう登場人物の名前からしてとぼけた風味の前者は早々に犯人がわかってしまいましたが、後者はどこか引っ掛かりながらも見事に騙されてしまいました。
「冷たい森の白い家」はホラー童話風。淡々としすぎて今一つ良さが伝わってこなかったです。
「神の言葉」は言霊の力を手に入れたという設定は面白かったですが、少年の精神的な弱さばかり浮き彫りになっててちょっと物足りない。その世界観についてもう少し掘り下げて読んでみたかった気がしました。