7期・51冊目 『天冥の標3 アウレーリア一統』

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

内容(「BOOK」データベースより)
西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した“酸素いらず”の国だった。海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカに暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたという彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが…。シリーズ第3巻。

29世紀の1巻から始まり、いきなり21世紀に戻った2巻、そして3巻では太陽系に進出した人類が各地に国家を建設し戦争まで行われた24世紀が舞台となっていて、今回は1巻で主役的立場にあった”酸素いらず”<<海の一統(アンチョークス)>>および彼らと縁のある医師カドムの先祖たちの物語となります。
2巻における救世群の子孫たちも登場し、少しずつ繋がりが明らかにされてきたかなと思いますね。
その分、大きな謎も提示されているんですが。


肉体改造により真空に適応した“酸素いらず”たちの国家・ノイジーラント大主教国はその軍事力によって、宇宙航路を脅かす海賊狩りの任にあたっているという。
その中でも華やかな戦歴を誇る強襲砲艦エスレルの若き艦長サー・アダムス・アウレーリアが海賊狩りの最中で被害者である救世群と関わり、海賊に奪われた報告書を取り戻すために過去に木星の大赤斑で発見され今では行方不明の宇宙遺跡の行方を追うことになっていきます。
発見者の名にちなんでドロテア*1・ワットと呼ばれるものは単なる遺跡ではなく、強大な動力炉であると同時に自力航行が可能な装置でもあったことから、話は複雑になっていきます。


「冥王斑」による世界的なアウトブレイクによって人類が新たな局面を迎えたさまを描いた2巻に対して、今回は宇宙冒険活劇といった風です。
その最中に巨大組織の謀略あり、人知を超えたモノの思惑有り、そしてもちろん迫力ある戦闘シーンや性を超えた友情・愛情劇も描かれていてまったく飽きさせません。
単体長編としても楽しめますが、読み終えるとやっぱり気になる部分*2がいくつもあって早く続きが読みたくなってしまいました。
ふと思ったのですが、この著者は主人公近辺の親しい間柄である重要な脇役を死なせる傾向があるような気がしますね。たぶん主人公が一皮向けるために必要だったりするのでしょうけど。

*1:その名は1巻でも登場する

*2:特にフェオドールね