6期・50,51冊目 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(上・下)』

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(上)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(上)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(下)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(下)

内容紹介
安田講堂攻防戦」の別れから30年。革命の志も理想も捨てた二人は、
息子と娘の見合いの席で、運命の再会をする。
1968年から1999年へ。二世代の男女を通じ、
日本の上流階級の実像をあらわに描く、新世代の「華麗なる一族」の壮大なるドラマ!
「息子をこの国の権力構造の頂点に立つ人間にする。それが私の願いだった」
大病院の経営者を親に持つ若き大蔵省キャリア・崇。次の総裁候補とも言われる大物 政治家の長女・尚子。
大蔵事務次官の仲介で持ち上がった二人の縁談は、だれもがう らやむ結婚となるはずだった――。

学生運動の女性闘士と東大の苦学生。理想も生い立ちも違いながら愛し合った二人。
安田講堂攻防戦」を機に別れ、別々の道を歩み、30年の時を経て大病院グループの会長・有川三奈と大蔵官僚を経て与党政調会長となった白井眞一郎として、それぞれの子の交際を機に再会。
両家の思惑が一致した有川崇と白井尚子との結婚を祝うはずが、意外な事実が次々と発覚して・・・というのがおおまかな流れになります。


有川会の財力と義父の政治力をバックに権力を頂点を目指そうとする有川崇。そこにはかつて権力に破れ挫折した母と、政治家の娘としてのしたたかさを持ち合わせる許婚・尚子のバックアップがあり、権力への階段を登っていくさまを描かれるのかと思いきや、これがどうにも脇が甘い上に、すぐカッとなる短絡思考。10年付き合って捨てた恋人・笹山宣子に振り回されて、困るとママに泣きつく格好悪さ。悪役としてどうにも物足りません。*1
そこは、有川三奈と白井眞一郎の目的のためには手段を選ばぬ貪欲さが際立つわけですが、物語が進むに連れて、崇や尚子はじめ他の人物が急速に存在感無くしていってしまうのはどういうことなんでしょうか、ちょっと気になったのですが。


内容紹介にある通り、まさに『華麗なる一族』を意識したドラマと言っていいでしょうが、スケールとしては格段に落ちる感じがしますね。
全体的な流れとしてはまぁ良いとしても、「どうしてこうなった」的な展開が目立ちます。人物の行動が短絡的というか、いまいち納得させられないまま動いていく。
崇の出生疑惑について思い込みだけで暴走してしまう三奈。やっていることは犯罪です。
年収4千万稼ぐ有能なキャリアウーマン・笹山宣子が崇に対してどんな復讐を企むと思えば何も考えずに行動した結果、あっさり逆襲くらってギャフンとなる。
背景の説明はされているのですが、それが登場人物の行動とマッチしていない気がするんですよね。
あと、上流階級を印象づけるためか、やたらとビンテージワインを味わう描写が出てきてうんざりさせられたのは貧乏人の僻みでしょうかね・・・。
終盤もたいした盛り上がりもなく幕を迎えてしまって消化不良でした。

*1:『Cの福音』はじめ楡周平にはカッコいい主人公は多いのだが、彼は選ばれなかったらしい