5期・77冊目 『碧海の玉座5 フィジー遠征』

碧海の玉座〈5〉フィジー遠征 (C・NOVELS)

碧海の玉座〈5〉フィジー遠征 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
日英軍はソロモン諸島へ侵出した米軍を撃退、英領ラバウルを死守した。一方豪州本土では米国からの支援を受ける独立派が政府軍の防衛線を突破、シドニーは「無防備都市」を宣言し独立派軍の入城を許してしまう。豪州情勢が急転するなか、前線から離れ平穏そのものだった英領フィジーに戦闘機の爆音が迫る!豪州への支援ルートを強化すべく米軍が奇襲をかけたのだ。領地を侵略された英国は、威信をかけた奪回作戦を発動。英本国からの要請を受け、初陣の戦艦「武蔵」を擁する日本海軍は、史上最大の長征に向かうが…。

前巻で辛くもソロモンに進出した米軍を撃退した日英軍。
ところが肝心のオーストラリアでは米軍の援助を得た独立派が勢いを得て総督派を陸戦で圧倒しシドニーは独立派の手にわたってしまう。そこにはクルセイダーとM4シャーマンの戦車戦が影響していたり。
米軍は英領フィジーを奇襲してより安全な援豪ルートを確保。このままでは英連邦たるイギリスの立場が危ういってところが冒頭のあらまし。
フィジー失陥をそのまま放置するわけにはいかず、英軍だけでなく日本軍も可能な限りの戦力をもって奪回に向かうというわけです。
そのあたりの戦略としてはごく自然に描かれていますね。そんな遠くまで艦隊を派遣しなければならない日本としてはたまったものじゃないけど。*1
ネタバレすれば、フィジー奪回を成し遂げた後に米軍の拠点であるサモアも攻略することで援豪ルートを完全な遮断を図る。要は幻と終わったFS作戦を形を変えて2巻通して描くのですな。


フィジーを巡る攻防は島の制空権争いから機動部隊同士の戦いへと。航空戦は日英が優勢ではあっても完全に奪取とはいかず、いつものように(笑)夜間の水上部隊の砲撃戦へと。せっかく武蔵が登場したのにあまり活躍しないのが横山さんらしいなぁ。
既存航空機の改修版が登場したり地味に新造艦が登場したりと、細かなところで改変はされているんだけど、戦術的には先が読めてしまう、あるいはまたかという部分が多くて(横山信義読者としてはね)、毎度のことながら新鮮味はあまり無いんですよね。M4シャーマンやF6Fの登場の前触れとか。北上・大井が雷撃挑むと必ず片方は轟沈するとかもうパターン(笑)
それでも手堅い文章が好きで読んでしまうのですけど。


結果的に稼動空母が極端に減ったのに米軍側は余裕。なぜならF6Fの実践テストが順調に終わり、それに合わせたように今後エセックス級がばんばん作られるし、モンタナという巨艦*2までも登場。まさにこっからアメリカのターン!
日英によるサモア攻略の裏で米軍の大掛かりな作戦が企てられている模様*3。それを描いてシリーズを終わらすのかなと予想してみたり。

*1:でも史実では珊瑚海海戦があのような結末にならなければきっと実施されていたんだよな

*2:アイオワ級の代わり。長砲身40cm砲3連装4基

*3:新鋭艦主体の米軍がトラックもしくはオーストラリアを攻め、レイテ海戦的展開を見せるとか