- 作者: 高嶋哲夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/04/10
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
米空軍のステルス爆撃機が北アルプスに墜落!その搭載物をめぐって男たちの死闘が始まった。報道カメラマン西崎勇次もその渦中に…。かたや週刊誌記者の松永慶子は、横田基地に侵入・逃走した北朝鮮の工作員に接触する。吹雪の北アルプスと東京。二つの場所で、男と女は絆を取り戻せるのか。渾身の国際謀略サスペンス。
現代的な国際ポリティカル要素にハイテク機器を使った謀略サスペンスとして、それなりに良くできたストーリーであるとは思います。
「それなり」になってしまうのは、せっかく北アルプスを熟知したジャーナリストが地の利を生かし特殊部隊の追跡をかわして謎の落下物を追う山岳サスペンスという興味深い設定に惹かれて読み始めたのに、それが今ひとついかされていないからなんですね。*1
自衛官が仲間になってからは、厳冬地仕様の軍の装備が活用されたり、レンジャー出身らしい彼の活躍によって面白みが多少増しましたが。
離婚間近の夫妻が北アルプスと東京と二つの視点から謀略を追う展開となっているのですが、途中でパターン化された行動を繰り返すようになるのでもどかしい思いがしますね。終盤、2人が追っていた謎が結びついて、ようやく謀略の全容が明かされるところが醍醐味ではあるのですが、部分的にリアリティの無さを感じた*2のと、あのテンポの悪さはちょっといただけません。
それに最終的に4カ国が関わってくる割には、主人公夫妻周辺の人物以外で名前まで設定されて活躍するのは総理と北朝鮮の工作員だけなんて寂しいですよ。勝手なことを言えば、夫妻ふたりのシーンを省略し、全く違う立場の人物の記述を挟んだりして緊迫感を増すようにすれば良かったかもしれません。
そして、家族の絆、ジャーナリストの使命など重いテーマを充分に消化しきれないままラストを迎えてどうも不完全燃焼な気分になったのは確かですね。それで何だか文句ばかりのレビューとなってしまいました。