3期・29冊目 『沈黙のフライバイ』

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

初めて野尻抱介読んでみました。期待していた『太陽の簒奪者』が在庫切れだったので、薄くて読みやすそうなこちらから。
遠い未来世界の話ではなくて、実はもう研究中で十年もしたら実用化されているんじゃ、と思えそうなリアル感あふれる短編集。技術的な話はちょいと私には難しい面もありましたが、文体としては落ち着いていて読みやすいです。各章の主人公たちが目にする風景−降り立った小惑星の地表「轍の先にあるもの」、隕石が衝突したばかりの煮えたぎるクレーター「ゆりかごから墓場まで」、中間圏における放電現象「大風呂敷と蜘蛛の糸」−など、普通に考えれば驚異的なものであっても力を入れすぎず、淡々と描かれています。
恒星間文明を築きあげた人類によるスペースオペラも好きですが、こういった近未来ハードSFも久しぶりに読んでみてよかったです。子供の頃、宇宙を憧れた気持ちが蘇ったような気分にさせられました。