- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 出版芸術社
- 発売日: 1994/09/01
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
「疫病船」ほか、「獣舎のスキャット」「水底の祭り」など、単行本未収録作品4篇を含む恐怖ミステリ・全10篇。狂気に憑かれた人々が犯す犯罪を異様な迫力で描いた、直木賞作家会心のクライムノヴェル傑作集。
こいつは期待を裏切らない劇薬小説でしたぁ。特に「獣舎のスキャット」のラストにはやられた。他の収録作品も含めて、健全な人、特にアブノーマルな性癖を嫌う人は読んではいけません。
と言っても露骨なグロも殺人も性描写があるわけではないのです(少なくとも私から見れば、ですけど)。何か不思議と引き寄せられる導入部によって狂気の世界へ導かれ、読み終えた後の余韻に浸る。何より人物の感情描写がうまく描かれているなぁと思いましたよ。
特に印象に残ったのはこちら。
- 疫病船
母親を殺そうとした娘の理由を探ると、終戦の引き揚げ船に行き当たる。過酷な状況の中で引き裂かれた家族の悲劇ではありますが、最後の母親の笑みが怖い。
- 風狩り人
本妻と愛人の争い、その子供である義理の兄妹の愛憎。それだけでお腹一杯なんですが、何よりもラストで愛を得るための二人の女の行動に怖さを感じますね。
- 獣舎のスキャット
姉の弟に対する歪んだ愛、そして殺意へと転じた憎しみ。果たして策謀の結末は・・・。
- 蜜の犬
途中で結末の想像はついたのですけどね。少年のドーベルマンへの憧憬はよく伝わってきたので、個人的には少女にもっとSぶりを発揮させても良かったんじゃなかったかなって。