5冊目 高村薫『マークスの山 上』

マークスの山(上) (講談社文庫)
これも以前はてなの質問にて推薦された本。高村薫も初読である。
上巻だけでは、過去の山での殺人事件と、現在進行している殺人事件が何らかの結びつきがあって複雑な事情が絡んでいるということ、マークスは頭文字らしきこと、裕之はただの精神異常者ではなく何らかの意図を持っていることぐらいしか推測できない。


それにしても途中まではテンポ良く読めていたのに、「発芽」の章あたりから都内を舞台にした事件の話になると、合田の感情と行動が入り混じった読みにくい文章になって多少辟易した。
しかも警察内部の縄張り争い、手柄の奪い合い、個人的な怨恨、保身等々・・・鬱になりそうな話(いずれの組織でもありがちな話ではあるが警察だからこそ余計に思うのかもしれない)が延々と語られる中で、事件解決への光明はさっぱり見えてこない。


それでも、前半張り巡らされた伏線をラストに向けてどういった具合に結びつけていくのかという点と、黙々と犯行の道筋を辿っていく現場の捜査官・合田による事件の解決を期待して下巻に移りたい。