2期・42冊目 『史記の風景』

史記の風景 (新潮文庫)

史記の風景 (新潮文庫)

歴史物を読むのも久しぶり。
軽く読めるものがいいかなぁと思って本書を選びました。


史記』に関する話題をまとめたエッセイ集で、いずれも2〜3ページというごく短い分量。これは元が新聞紙掲載という形だったからというのもあるでしょうが。テーマによっては物足りなく感じたりもしました。
待ち時間とか、ちょっとした空き時間に少しずつゆっくり読むのに適しているようですね。


国史、中でも春秋戦国時代の第一人者である著者による、独特の語り口での『史記』からのエピソードは興味深い内容がいくつもあります。
「完璧」・「国士無双」・「酒池肉林」等の故事成語の生まれた逸話、それかあら織田信長水戸光圀坂本龍馬と言った日本史の有名人物が史記から影響を与えていたというあたりが非常に面白い。
実は『史記』の記述だけでは素っ気ない部分が多いそうなのですが、そこは他の書物(『春秋左氏伝』など)も引用しつつ、隙間を想像力で補って、読みやすい内容に仕立て上げられているのは、宮城谷氏ならではですね。


春秋戦国時代に興味を持ち『史記』を読んでみたくなった時の紹介書みたいな感じですね。

2期・43,44冊目 『第六大陸(1)〜(2)』

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

『天涯の砦』で興味を持った小川一水氏の著作をもっと読んでみたくなって、選んだのがこちら。
人が月に行くという、SF的には古そうで実は未だに簡単に実現できていない*1テーマが意外でした。しかも日本の民間企業が協力しあって作る施設というのが・・・。*2
巨大企業の創業家の令嬢でもある天才少女がヒロインでかつ発案者であるのですが、このプロジェクトを実現しようとする経営者や技術者達の熱い戦いも描かれていて、さながらプロジェクトXの月世界版といった感じです。


世界中の熱狂的な支持を集め、順調にプロジェクトが進んでいくかと思えば、法律的・技術的な面からの障害にぶつかるわ、事故が起こってマスコミからのバッシングに遭うわで、プロジェクトは頓挫の危機に陥ったりもしますが、それらを乗り越えていく様も感動的に書かれていて、読み手を惹きつけます。
ロケット技術や宇宙空間における技術関係に関しては、門外漢なので難しく感じましたが、ひょっとしたら10年か20年後にはこういったことが実現できるのではないかって思えたり。


最後の「災い転じて福と為す」で月面上に発見されたものは、ストーリー的にやや都合よすぎるように思えましたが、思えば何箇所も伏線があったのですね。
とにかく、いわば人類の夢を描いた作品で、読後感もとても良かったのでした。

*1:そのへんの事情についても最初に説明があります。だったら本当にこの作品のようにできたらいいのに、って単純に思ってしまいました。

*2:軍事目的でもない、科学目的でもない、なんと結婚式場なんですよ!