東北楽天ゴールデンイーグルス 2024年シーズン予想

いよいよシーズン開幕まで一か月を切りました。
早いところでは去年から2024年シーズンの順位予想がYoutubeなどで出ていましたね。
そんな中、我が楽天イーグルスは圧倒的下位になっています。個人的に見た感じでは最下位が一番多かった気がします。

主な理由。
・守護神松井裕樹投手のMLB移籍。
・便利屋的中継ぎをこなした安樂投手の退団。
・2年連続チーム防御率最下位だった上、先発ローテーションの柱(岸、田中、則本)が高齢化。さらにもっとも投球回数が多かった則本投手が抑えに回ることで、先発投手陣が薄くなっている。
・親会社の状況が厳しくて予算が足りず、まったく補強がなかった
→情報が遅かったが、日本ハムを退団したポンセ、広島を退団したターリーを獲得。

また、石井監督の後を継いで新任の今江監督となりました。監督としては新人です。昨シーズン2軍打撃コーチから1軍打撃コーチに昇格後、チーム打撃は目に見えて良くなりましたが、監督としては未知数。吉と出るか凶と出るか。

投手陣が安定してこそ試合が作れると言います。昨シーズンBランクに終ったものの、西武・日本ハムは安定の投手力、そこに積極的な補強もしているから楽天より上位に行くのではという予想でしょうか。
昨年Aクラスだったオリックス、ロッテ、ソフトバンクがさほど落ちる要素は無く、2024年も優勝争いを繰り広げる。特に強力打線を擁するソフトバンクと、二人の主力投手が抜けても抜群のチーム力を持つオリックスの2強と予想されています。

確かに楽天の最大の強みであった守護神が抜けたのは非常に痛いです。だからこそ、今江監督がエース的な働きをしていた則本投手を抑えに指名したのもわかります。年々奪三振率が下がっていましたが、最終回に全力投球することで、持ち味が戻るのではないかと。

一方で楽天の打撃陣に大きな変化はありません。むしろ左ばかりだった打線に右打者が増えて、中堅が台頭してきたと言えます。実際にリーグの中でも上位の打撃成績を収めています。
→得点2位 打率3位 本塁打2位 盗塁1位
よろしくない傾向としては、四死球や単打による出塁率は高いけれど併殺も多く、主砲浅村選手頼みであることでしょうか。

補強に関しては、新規助っ人もFA移籍もなし。今のところトレードもなし。
ただ、メジャー経験があっても活躍できるとは限らないのが昨今のNPBです。特に打者。
その点、楽天の外国人はいずれもNPB経験有るので、大きな外れはないのが安心材料ですね。

最近、面白い動画を見つけました。
youtu.be

楽天の過去5年間の成績はほぼ5割なんですよね。
ファン目線からしても、今の戦力でリーグ優勝は厳しい。
逆に怪我人続出や主力の極度な不振がないかぎり、最下位は無いんじゃないでしょうか。実際、2023年前半は極度に打線が冷え込んで最下位争いをしていましたが、後半は反動がきたかと思えるほど活発になり、CS争いを繰り広げて一時は2位にまで上がりました。

あとは選手の活用ですかね。オリックスの中嶋監督はベテラン若手に関係なく、好不調を見極めて入れ替えしていると聞きます。
その点、石井監督は1軍―2軍での行き来が活発ではありませんでした。CS争いの続いた中、若手を試せなかったというのもあるでしょうが。

2023年オフにベテランを退団させて、チームの世代交代を図ろうという姿勢が見えました。
2軍コーチを務めていた今江監督に変わったので、2軍の有望株にチャンスが増えることが期待できます。実際に練習試合やオープン戦では去年までほぼ2軍だった選手(平良、茂木、黒川、堀内、石原)が名を連ねています。
そこから昨年の村林・小郷選手のようにブレークする選手が出てくれば、打線に厚みが増します。
投手陣に関しては世代交代を図りながらの運用で、どこまで若手が成績を残せるか。期待と不安が混じります。

結局、今年も打のチームになりそう。ただし、天敵とも言える苦手投手は相変らず打てないかな。
客観的に見ても、良くて3位。悪くて5位。勝率490~500あたりに収まり、4位になる確率が高いでしょう。
ただ、ファンとしてはCS争いはして欲しいといったところです。

横山信義 『高速戦艦「赤城」3-巡洋戦艦急襲』

航空主兵主義に活路を求めた連合艦隊は、初戦の劣勢を押し返しついにフィリピンの米国アジア艦隊撃退に成功。さらに太平洋艦隊に対抗するため、日本が最後に建造した高速戦艦「赤城」をも投入して空母機動部隊の大増強をおこなった。
対する米軍は艦隊の再編と同時にトラック諸島の要塞化を進め、B17大型爆撃機によるマリアナパラオの日本軍基地への空爆を継続。
連合艦隊は太平洋艦隊が再び攻勢に出てくることを確信し、総力を挙げて南洋に向け出撃した。
だがその時、思いもかけない方面から米軍来襲の一報が……。

「日本艦隊、特に空母を捕捉するためには、火力よりも速力だ。空母に追いつけるだけの速度性能と、日本軍の戦艦に打ち勝てる火力を持つ艦は、レキシントン級しかない」

フィリピンを制して南方への航路を確保した日本。それに対し、アメリカは手をこまねいているわけではありません。
海戦劈頭に奪取したトラック島、以前からの領土であるグアム島を要塞化する一方で、日本領であるサイパンへと手を伸ばしてきます。南方がだめでも、最短ルートで首都を目指せばいいってやつです。
ということで今回はサイパン島を巡る攻防が中心です。
いくらアメリカ海軍が戦艦中心といっても、補助戦力として空母が有用なのはわかっています。ただ、次々と沈められてしまい、大西洋方面から回せるにしても限りがある。新造艦は間に合わず、数が少ないのが日本軍にとっては救いでしょうか。

基地同士の航空戦はすでに行われていて、そこに米軍の機動部隊が来襲します。矛先はサイパンではなく中継基地となっていた硫黄島
迎撃のために出撃していた日本側の機動部隊との間で航空戦が繰り広げられました。
数の多さもあって勝利を収めた日本軍はサイパンの救援およびグアム襲撃を目指します。しかし、迂回してきた巡洋戦艦を始めとする水上部隊に空母が攻撃をかけられるという事態が発生。
空母群の中でも速度の劣る加賀などは逃げきれない。このままでは空母が戦艦の砲撃で沈められてしまう。
そこで万が一のために分派されていた戦艦赤城の救援が間に合い、砲撃戦が繰り広げられたのでした。

日本側の戦艦は赤城一隻だけであり、圧倒的に不利は否めない状況でしたが、基地から飛び立った天弓の夜間雷撃と、いつものように巡洋艦駆逐艦の雷撃もあってなんとか退けるといった結末でした。まぁ、日本軍は戦艦の数が少ないですし、いつものように戦艦大和で圧倒するわけにもいかない。自然とそういった戦いとなるでしょうね。

ここで面白いのは、防空巡洋艦アトランタ級が費用の割には評価が低くて量産されなくなったことですね。航空に振っている日本軍を助ける判断になります。それでも総合的に防空能力が高いですから、そこを日本軍はどう対処していくか。
ドイツが中立なので、対艦ロケットは実現するのか。技術的な制限もありますしね。大筋ではどこかで講和を目指すのでしょうが、今後の展開を楽しみにしていきたいと思います。

中山七里 『復讐の協奏曲』

内容(「BOOK」データベースより)
三十年前に少女を惨殺した過去を持つ弁護士・御子柴礼司。事務所に“この国のジャスティス”と名乗る者の呼びかけに応じた八百人以上からの懲戒請求書が届く。処理に忙殺されるなか事務員の洋子は、外資コンサルタント・知原と夕食をともに。翌朝、知原は遺体で見つかり、凶器に残った指紋から洋子が殺人容疑で逮捕された。弁護人を引き受けた御子柴は、洋子が自身と同じ地域出身であることを知り…。

プロローグは主人公の少年時代に起こしたバラバラ殺人事件。それを被害者と友人の視点から描いています。最後に被害者少女の母親が友人だった女の子に語り掛けるのです。少年に対する復讐を手伝って欲しいと。
「お願いね。洋子ちゃん」
そして弁護士・御子柴礼司事務所の唯一の事務員の名は日下部洋子。御子柴礼司の過去を知りながら、態度を変えることなく勤めている優秀な事務員です。

相変らずの弁護士活動を行っていた御子柴礼司ですが、彼を名指しした大量のの懲戒請求が届きます。黒幕は『この国のジャスティス』を名乗るブログ主。ブログ内で悪徳弁護士・御子柴礼司に正義の鉄槌を下そうと煽られて大勢の人たちが乗った結果でしたが、匿名で可能と嘘も混じっていました。
数百通の懲戒請求をたった一人で処理しなければならない。これは立派な妨害活動だと御子柴は訴えることにします。そうした動きをすることで、煽ったブログ主の正体を暴こうというのです。

しかし、同じ頃に事務員の洋子が逮捕されてしまいます。容疑は殺人。
知り合いを通じて会った男性が洋子とデート*1した帰りに殺されていました。決め手は凶器のナイフに指紋が残っていたこと。
証拠充分なことから警察は洋子を容疑者と断定して留置所に入れられてしまいます。
それで困ったのが御子柴礼司。彼女がナイフで男性を殺すなど考えにくい。誰かに嵌められたのではないかと。
優秀な事務員を救うために弁護を引き受ける傍ら、弁護士協会に出向いて臨時の事務員を派遣してもらうように依頼します。そこで来たのはかつて御子柴礼司と対決したことのある弁護士・宝来でした。

タイトルに復讐とあることから、かつて御子柴礼司が少年時代に犯した殺人。その被害者の母親が関係してくるであろうと予想できます。御子柴礼司はその事実を自ら明かしていたのですから。
しかし、洋子にとって被害者少女は数少ない友人であったと明かされたのは驚き。幼い時期の出来事であったも、強烈な記憶を持っているはず。それでも事務員を続けているのはなぜか。『この国のジャスティス』を名乗るブログ主の正体、そして洋子を陥れたのは誰か? 
そのあたりも気になりながら読んでいました。

洋子という右腕を捕らわれて、窮地に陥っていそうでいながら動じることない御子柴礼司の精神力には脱帽ですね。そうでなければ過去を明かした上で弁護士を続けられないでしょうけど、
洋子が殺人などするわけがない。しかし、決定的な証拠があるのをどうやって覆すのか。
法廷では検察のミスというか盲点から殺人を犯していないことを明らかにしたばかりでなく、まんまと真犯人をおびき寄せて暴くあたりが最高でした。
そして明かされたブログ主の正体。まぁ、予想通りでした。気持ちはわからないでもないですが、哀しいですよね。
最後に登場した倫子*2の存在が救いです。御子柴礼司が変わったという証拠でありました。

*1:洋子自身にはその気がなく、単に食事しただけの感覚。

*2:かつて冤罪を晴らした被疑者の娘

不手折歌 『亡びの国の征服者7 魔王は世界を征服するようです』

家族の愛を知らぬまま死に、二つの人類――シャン人とクラ人が生存競争を繰り広げる世界に転生した少年ユーリ。王国に未来が無いことを察し、新大陸に望みを繋ぐ彼だったが、想いを交わした王女キャロルとの間に子供ができたことで婚約を決める。しかし両家の祝いの席で魔女家の奸計により両親と女王が毒殺され、キャロルも猛毒によって命の危機に瀕してしまう。命からがらキャロルと共に王城を脱出したユーリは、父ルークに代わってホウ家の新たな当主となり、兵を率いて王都を奪還し魔女家を滅ぼすべく行動を開始するのだった。
長きにわたって王国を蝕み続けた魔女家の最期――しかしそれは、彼女らをも利用しようと画策したクラ人との、新たな戦いの始まりに過ぎなかった。新たな十字軍の襲来を見据えてユーリが取る選択は……!?

この手の創作物では非常に珍しいくらいの悲劇が主人公ユーリを見舞いました。
前世で家族の愛を知らないまま転生した主人公にたっぷりと愛情を注いで育ててくれた両親。亡びの兆しが見え始めた国をなんとか立て直そうとしていた、これから義母になるはずだった女王。ユーリにとって近しい3人を毒殺によって一挙に失いました。
さらに愛する王女キャロルも一命はとりとめたとはいえ、医療の発達していないこの世界では予断を許さない状態。
直接の犯人はキャロルの妹カーリャでしたが、黒幕はこの国の最大の最大既得権益者である魔女集団。
今回はユーリの反撃、さらに十字軍の来寇にも備えるという濃くて読み応えのある内容となっています。

まずは重体のキャロルを連れて王城から脱出。屋敷に辿り着いた後は手勢をまとめて王都から領地に向かいます。この脱出戦では殿を任せた老戦士ソイムの奮闘が見どころでしたね。
領地に戻ってからは敵味方となる将家を見定めてから王都攻略。難しいところは近い将来十字軍に対する迎撃があるため、戦力は残したいところ。ビラを撒いて今回の陰謀を明らかにすることにより、大義を掴み敵の戦意を挫くあたりがさすがです。
戦力が減少した王城をなんとか攻略、カーリャを死に至らしめました。最後は魔女が集う隠れ家に赴いて一斉に始末したところでようやくケリをつけられました。復讐は成ったものの、失ったものはあまりに大きすぎたのでした。

後半はクラ人の要人であるアンジェリカの視点から十字軍が起こされる場面。そしてユーリが迎撃準備に入るところも描かれました。
シャルタ王国を掌握しつつあるユーリですが、クラ人側でユーリの脅威を認識しているのはごく少数。次の戦いを通じて魔王として恐れられていくのだろうなと思います。

加筆エピソードは療養中のキャロルに付けられた、ある侍女視点の物語でした。騎士学院時代から観戦までは輝かしいほどの存在感を放っていたキャロルですが、毒によって体を壊してからは登場場面も減ってしまいました。
ですから、キャロルのエピソードが追加されたのは本編の読者としても良かったですね。

横山信義 『高速戦艦「赤城」2-「赤城」初陣』

戦艦の建造を断念し航空主兵主義に転じた連合艦隊は、辛くも米戦艦の撃退に成功した。しかし、アジア艦隊撃滅には至らず、また米極東陸軍はバターン半島コレヒドール要塞において死守の構えを見せている。
資源の多くを輸入に頼る日本としては、フィリピンを抑え南シナ海制海権を握り通商路を再開させねばならなかった。
ついに、アジア艦隊殲滅のための新鋭空母を加えた機動部隊に出撃命令が下される。しかし、米太平洋艦隊もアジア艦隊を援護するべく機動部隊を繰り出すのであった。

「太平洋艦隊が来れば、日本軍などすぐにでもルソンから叩き出せる。それまでは、何としてもバターン、コレヒドールを守り抜く」
「アジア艦隊がミンダナオ島にいるとの断定は、現時点ではできない。だが、彼らがフィリピンのどこか、それも中部以南に潜んでいることは確かだ。問題は、彼らが今後、どのように動くかだ」

航空主兵主義に戦略転換した日本と、国力に物を言わせた大艦巨砲主義をひた走るアメリカが開戦したシリーズの第二巻。
史実と違って欧州国家は平穏そのもので、戦っているのは日米のみという状況です。
初戦はフィリピン海域にて日本海軍が勝利を収めました。とはいえ、完全に航空主兵を実証したわけではなく、戦力を過信した米軍の油断と日本軍の巧妙さが勝敗を分けた印象です。
南方からの資源を得るため、一刻も早く南シナ海制海権を握りたい日本軍は着々とルソン島の攻略を進めます。上陸した陸軍はバターン半島コレヒドール要塞に籠城した米極東陸軍との戦いが始まりました。

一方で未だ戦艦を始めとした戦力を保っているとはいえ、本拠地を脱した米アジア艦隊は孤立し、修理もままならない状況。
そこでトラック島に進出した太平洋艦隊が救出作戦を開始します。
日本軍とて、むざむざ逃すわけにはいかないので、翔鶴級を加えた機動部隊が出撃します。そこに日本海軍が最後に建造した戦艦「赤城」が加わっていたのでした。

受け身で始まった戦争ですので、史実のような快進撃とはならず。かといって航空主兵の強みはまだ完全に生かされず(機体性能とか戦術とかいろいろあって)。日本軍はなんとか勝ちを収められている状況です。実に著者らしい。
とにかく資源のほとんどを輸入に頼る日本にとっては南方資源地帯との通商路が命綱。アジア艦隊を撃破し、ルソン島周辺の制空権制海権を手中することによって、ようやく一息つけるというわけです。

今回はハルゼー率いる空母主体の任務部隊が出撃して、アジア艦隊撤退の邪魔になるパラオ諸島の基地を空襲。それをきっかけ機動部隊同士の対決が描かれました。
ここでも機体性能や空母の数から日本軍が勝利を収めます。
ただし、日本軍も損害が出ているわけで、勝ちすぎていないさじ加減が今後の米軍の戦力にどういった影響が出るかですね。大艦巨砲主義は根強いようですので、航空主兵に切り替えるのかどうかは疑問。戦艦主力・空母は補助でいきそうな気がします。
それでもアメリカの国力を考えたら、どっちの数もあっさり日本を上回ることができるから化け物国家ですよね。

道造 『貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士3』

現代日本から男女の貞操観念が真逆の異世界へ転生し、その世界では珍しい男騎士となった辺境領主ファウスト
隣国ヴィレンドルフとの和平交渉という大役を果たした彼のため、リーゼンロッテ女王はその功績に見合う「嫁」を決定する。
一方ファウストは、ヴィレンドルフで得た「遊牧騎馬民族国家」の情報に、前世の知識で「モンゴル帝国」を知るが故に危機感を抱く。
しかしいくら言葉を尽くそうとも仮想モンゴルの常識外の脅威は誰にも理解されず、ファウストは王国を動かすためにある「禁忌」を犯す覚悟を決め……!?
貞操が逆転した世界で“誉れ”を貫く男騎士の英雄戦記、衝撃の第三幕!!

男女の立場が逆転した世界。主人公ファウストはモテモテ(全体というより、彼をよく知る女性たちから)なのですが、本人はまったく自覚なく。登場人物は女性ばかりなのに、恋愛要素は少ない。むしろ骨太の戦記3巻です。

前巻にてファウストはヴィレンドルフとの和平交渉という大役を果たしました。
一辺境領主としては大きすぎる功をあげたわけで、御恩と奉公で成立している中世封建国家としては、ファウストにふさわしい褒章を与えざるを得ません。今までは金銭で報いてきましたが、騎士に対する以上は大きな名誉がふさわしい。
そこで王家の次女たるヴァリエールが臣籍に降りて、ファウストと結婚するという流れになりました。
もっとも、次期君主たるアナスタシア、その第一の側近たるアスターテ公の愛人になるのが彼女たちの中で内定していて、童貞を狙われているようですが(笑)

ファウストファウストで、女王との接見を前にして、ある覚悟を決めていました。
それはヴィレンドルフに赴いた際に知ってしまった。モンゴルの脅威。
前世ではただの歴史知識でありましたが、領主である今は違う。いわば大災害をテレビで見るのと、被災地の一首長として立ち向かう。当事者としての立場なんですよね。
世界線は違っても、地理的に近い未来に訪れるであろうと確信したファウストは悩みます。ただ脅威を訴えても信じてもらえない。
そこでゲッシュという神への誓いをもって覚悟を知らしめるしかないと決意するのでした。ただ、破れれば自死しなければいけない禁忌ゆえに反対されるのを覚悟して。

今回も各キャラクターが生き生きとして描かれていましたし、硬軟のバランスが良くて非常に良かったです。自らの命を賭けたファウストが恰好よすぎます。
ついにファウストの嫁が決定。本来は感動というか微笑ましいはずが、最後はシモの話題で笑っちゃいましたね。女性ばかりの他の貴族たちが気になるのは仕方ない(笑)
いろんな意味で作中の2,3年後あたりが気になってしまいます。
辺境領主たる主人公ファウストにとって、何が心の拠り所か。何のために生きようとしているのか。そこがぶれずにしっかり書かれているのが行動に納得できる部分であります。

横山信義 『高速戦艦「赤城」1 帝国包囲陣』

昭和一六年。満州国を巡る日米間交渉は、互いの主張が平行線をたどったまま打ち切られる。
米国はダニエルズ・プランのもと、四〇センチ砲装備の戦艦一〇隻、巡洋戦艦六隻をハワイとフィリピンに配備。アジア艦隊を増強して軍事的圧力をかけ続けた結果、西太平洋の緊張は極限に達していた。
この強大な国力に比するべくもなく、日本は戦艦の建造を断念する。海軍の主力を空母と航空機とすることで活路を見出そうとするが、航空機で戦艦に勝てるものなのかは確証が得られていなかった。
日米戦争が勃発すれば、敵の大艦隊が一気に日本本土へ迫り来るであろう。
連合艦隊は、この事態を食い止めることができるのか!?

横山信義氏の新シリーズです。
第二次世界大戦をテーマにした作品ばかりでマンネリと言われて久しいものの、安定した刊行間隔と筆力で読者を楽しませてくれるのは確かですね。

今回は海軍条約の時点で改変が試みられています。
アメリカはダニエルズプラン通りの戦艦群(戦艦10隻、巡洋戦艦6隻)を主戦力としている世界。国力に劣る日本としては八八艦隊計画をそのまま実行するわけにはいかない。
そこで戦艦は長門・武蔵に続く巡洋戦艦赤城で打ち切り、空母を揃えて航空主兵で対抗しようとする。建造途中だった加賀・土佐は空母に改装されます。
つまり、史実よりも早めに大鑑主砲主義を諦めて、航空主兵に舵を取るわけですね。それなのにタイトルが高速戦艦「赤城」とは。まぁ、機動部隊に随伴できるし、時には水上戦もできるし、獅子奮迅の活躍を見せるということでしょうか。

世界観としては中国大陸(主に満州)を巡って日米が対立を深めていくのは史実通り。しかし、欧州は大きく変わっています。ソ連が建国早々に崩壊してロシアとなっていますし、ナチスドイツの台頭もなし。つまりスターリンヒトラーが退場しているので、欧州方面は平穏です。
史実では海軍条約と合わせて日英同盟が解消されていますが、ここでは大英帝国との同盟が継続していて、電子・航空などの技術が導入されているのが心強いところです。
英仏蘭との関係が良好なので、資源は東南アジアから輸入できるのですが、アメリカとの関係が悪くなるとフィリピンが喉に刺さった棘のような存在になります。
作中ではフィリピンには戦艦を始めとしたアジア艦隊が増強されているわけで。もし開戦となったら、どう対処するか?
史実では奇襲となりましたが、この世界では開戦の引き金を引いたのはアメリカであり、ほぼ同時にマーシャル・トラックが攻撃を受けてしまいます。開戦前から準備をしていたのは確実。
とにかく、石油やゴムといった戦略物資を東南アジアから運んでこなければならない。そのためにはフィリピンの無力化は切実というわけで、台南の基地航空隊と空母6隻を基幹とする機動部隊がフィリピン攻略を目指す展開です。

史実で航空機が戦艦を沈めたといっても、イタリアのタラント港、真珠湾ともに停泊したいたところ。作戦行動中ではマレー沖海戦が有名ですが、上空支援はなく補助艦艇も少ない状態でした。
大艦隊の前に航空機がどれくらい攻撃能力を発揮できるのかが見もの。著者のことですから、そう簡単に戦艦を撃沈できるとは限りません。
陸上機ですが、イギリスの双発戦闘攻撃機が採用されているように、いろいろと考えているんじゃないかと思いますね。