2期・56冊目 『悪霊刑事』

悪霊刑事 (徳間文庫)

悪霊刑事 (徳間文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
誰が名付けたか、その男は“悪霊刑事”と呼ばれた。警視庁刑事・妙玄真之を名乗っているが、そんな男は警視庁に在籍しない。だが闇に潜む巨悪の前には、必ず彼の影が訪れるという。新種の蝿が大量発生し、体内に卵を産みつけられた人や家畜が、狂気に疾るという事件が相次いだ。人の脳を喰らう蝿。異界からの侵入者を求めて、妙玄の追跡行が始まった。異色ハードロマン長篇。

7月頃から西村寿行の一連のパニック小説が読んでみたいと思って探してみたものの、ほとんど在庫切れ*1で、唯一購入できたのが本書でした。
買ってすぐには読まず例によって積んであったのですが、新聞の報道で8/23に逝去されたと知ってびっくり。かつて「三村」と並び称された半村良森村誠一に比べれば全然数は少ないのですが、やはり自分が読んでいた作家の死というのはショックではありました。


内容は、はじめの2章で悪霊刑事こと妙玄真之が幻想的な形で登場し、何か人智を超越した存在ぶりを見せつけられますが、メインは悪霊蝿と呼ばれる新種の蝿。
もともと蝿にはダークなイメージが強くて映画などでも御馴染みですが、ここに出てくる悪霊蝿は特に凶悪さが強調されています。集団で人間や家畜に襲いかかり、卵を産み付けてしまうのです。*2寄生された人間は知らないうちに脳にいたるまで体全体を侵され、凶暴化して周りの人間を襲いかかり、犠牲者を増やす。
いや、まったく寄生された描写は鬼気迫るものがあって凄まじいのですが、さすがに読んでいて気持ち悪くなってしまうことも。蛆まみれの○○○シーンは後引くなぁ。


鹿児島で突如発生した悪霊蝿は、桜前線の北上とともに九州・四国を蹂躙し必死の防戦に努める人間たちの努力をあざ笑うかのようなのですが、実は悪霊蝿には黒幕がいるわけで、そこでようやく妙玄真之が登場し、事態の解決に臨みます。
それにしても「闇に潜む巨悪」ときくと、マフィアとかヤ○ザといった犯罪組織を連想したのですが、戦う相手はこの世のものでない存在だったわけです。
しかし、あれだけの猛威をふるわせておいて、最後は「えっ、終り?」というくらいあっさりした幕切れだったのが不満。
いくぶんSF的な展開ではありますが、納得のいく説明を求めてはいけないようです。
それから同じ表現の繰り返し・ワンパターンな陵辱シーンには少し辟易させられました。それが持ち味といや、そうなんでしょうが。

*1:ブックオフなどの古本屋で探した方が早かったかもしれん

*2:現実にも中南米産のニクバエによる蝿蛆症という恐ろしい病気があることを知りました。