- 作者: 海音寺潮五郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/01/10
- メディア: 文庫
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今回の悪人として選ばれたのは次の6人。
例によって悪評高い人物が選ばれました。
ほぼ納得いく人選だったのですが、ちょっと松平忠直だけがよくわからなかったです。私が知らないだけで、読んでみてその暴君ぶりに納得なんですが。
ちょっと可哀想だと思ったのが、陶晴賢。
それまで主君に寵愛されていた重臣でしかも歴代の家老職にあったのに、別の臣(相良武任)にその座を奪われ、讒言(陶晴賢にとっては)によって自身が危なくなって、優柔不断な主君を討つなんてよくある話のようですが、主殺しの先駆けみたいな汚名を負ってしまったわけですな。
その後対立したのが毛利元就だったという相手の悪さがありますが、読んでみると相良武任登場までは武将としては高い能力を発揮していたのでもったいない気もしました。
日野富子に関しては応仁の乱の黒幕であると同時にその守銭奴ぶりは好きになれないです。*1
松永久秀・宇喜多直家みたいな謀将はけっこう好きなんですよね。*2 この2人のうち、著者は宇喜多直家より松永久秀の方を悪人として評価していますね。宇喜多直家はその陰湿な手口と向背定かならぬ姿勢で小悪党呼ばわりです。
「向背定かならぬ」のは、この時代の小豪族の常だろうとは思いますが、最後に平蜘蛛を抱いて自爆した久秀や、小勢で大軍を翻弄した真田昌幸のような一種の爽快さが感じなれないので仕方無いのかもしれません。
それから徳川家の2人。
著者は徳川家の血筋として極端から極端に走る狂気の質があると述べています。
3代将軍家光などもそうであったけれど、あの時代の名老中がフォローした為にボロが出なかった。だけど残忍な所業を繰返す松平忠直には忠臣が無く、将軍としての独裁権を握った綱吉は「生類憐れみの令」という悪法によって暴君の名を残しました。
個人的にも綱吉という人物は好きになれませんが、要はキチガイが独裁者になったらどうなるかといういい例なのですね。*3