- 作者: 倉橋由美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/07/29
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
超現実的なおとぎ話こそ、同情も感傷もない完全に理屈にあったもので、空想ではありません。そこにあるのは、因果応報、勧善懲悪、自業自得の原理が支配する残酷さだけです。この本は、ギリシア神話やアンデルセン童話、グリム童話、日本昔話などの、世界の名作童話の背後にひそむ人間のむきだしの悪意、邪悪な心、淫猥な欲望を、著者一流の毒を含んだ文体でえぐりだす創作童話集です。
童話から絵空事を抜いて、本当はこうなんじゃないか?って登場するものを理屈どうりに動かしたら、残酷だけど現実的にあり得そうな展開が待っている。「大人のための残酷」とはまさに言いえて妙ですね。新解釈により、救いの無い話、皮肉な結末を容赦なく描いている短編集です。
神と人間と動物の区別無く露骨に悪意と欲が渦巻く世界では、愚者にはそれなりの結末が用意されているし、知恵と意思がある者の方に運命の女神は微笑む。この中の「白雪姫」を例にすれば、前者が白雪姫で後者が新しい妃となってますね。
また、世の中の正義と悪の区別なんていかに曖昧なのかを教えてくれますね。例)「鬼女の島」
これを読んで面白くて笑ってしまった私は不謹慎なのでしょうか。「子供たちが豚殺しを真似した話」なんかは充分風刺が効いていて思わずニヤリとしてしまいました。
ともかく元となった童話とのギャップを楽しめる大人向きでしょうね。
最後を締める教訓がなかなかいかしています。