まふまふ 『陶都物語三 ~赤き炎の中に~』

怪童・草太、ついに出世のとき! 次の交渉相手は美濃郡代、それとも将軍さま!?
天領窯を手中にした草太の運命が、大きく動く第3巻! !

高級白磁<ボーンチャイナ>を天下に売り出す。そんな野望に燃える草太の次の障害は、美濃の焼物流通を独占する特権商人。
その取締役をつとめる豪商・西浦屋とチート小僧が激しくぶつかり合う!
地縁血縁にこすからい搦め手――からくもそれらを掻い潜り、草太が見出したわずかな商機は、外国人が来航し始めた下田の港にあった――。

ようやくボーンチャイナの製造体制が整っていくのですが、美濃の陶器全般を牛耳る西浦屋によってあの手この手で妨害を受けます。
そんな時に西浦屋の娘・祥子に遭遇して、心ならずも西浦屋の主人である円治と対面して啖呵を切る場面もあったり。
ともかく日本一、いや世界一の陶磁器作りに邁進する草太の次なる懸案はいかに高く売りつけるか。
草太は完成した中で選りすぐりの茶器セットを持って向かうは伊豆下田。ここで知識チートを活かすべく、来日した外国人向けにティーセットのプレゼンを目論んでいたのでした。
下田で運良く出会えたのは幕末における著名人の一人、川路聖謨
人格者である彼のおかげで草太はなんとロシアの使節プチャーチンとの話し合いの場に潜り込み、見事売り込むことに成功します。
プチャーチンが持ち込んだボーンチャイナを欲しがり、その場で渡されてしまったのは草太の目論みとは違ってしまいましたが、幕府への足がかりはできたのは確か。
将軍との接見を経て幕府御用品として認められてから天領窯を取り巻く環境は目まぐるしく変わっていき、草太も多忙を極めていくのでした。


小説家になろう』の歴史ものの中でも時代考証的に本格派といってもいい本作ですが、書籍化となってからはセールスが振るわなかったようで。
一巻だけで打ち切りかと思われましたが、間隔は空いたものの続巻は刊行されました。
しかし、この三巻で書籍は完結となったようです。
歴史で人気のある時代といえば一に戦国時代です。
大河ドラマでもよく扱われるように、幕末も面白さでは負けていないと思うんですけど。
セールスが不振だったのは主人公が幼すぎたり、ヒロイン不在だったり、陶器というテーマが地味だったとか?
歴史好きには人気でも、一般受けはしなかったのかもしれません。
3巻で終わりと知って購入したものの、なんとなく1年くらい積んだままでした。

しかし、読んでみるとやっぱり面白いですね。
前半は陶磁器作りの用語が頻出したり、なかなかじれったい展開もありましたが、草太が史実著名人相手に手八丁口八丁で売り込んでいくあたりは痛快さを感じました。
原作では老中筆頭の阿部伊勢守に才能を買われたあまりに陶磁器作り以外に奔走しすぎて心配するほどでした。まぁ、それはそれで充分面白くて先に気になったものです。
3巻完結ということで、将軍・老中との謁見がクライマックス。エピローグはプロローグに繋がる形で終わらせたので、中途半端さはあまり感じさせないきれいな幕切れだったのかもしれません。
だとしても、原作の魅力を充分伝えきれずに終わってしまった感はありますね。