7期・30冊目 『時空の旭日旗8 過去と未来の間で』

内容(「BOOK」データベースより)
1943年6月のマーシャル、ポナペ攻撃の失敗により、連合軍の戦力消耗は甚大となった。米国は戦力が整うまで日本軍の兵站線を分断し戦力を削る通商破壊作戦へと方針を転換する。南太平洋では狼群作戦を展開。さらに北千島・アッツ島キスカ島への空襲も準備されていた。これに対し、日本はA情報による航空海防艦『鶫』『速鳥』型が竣工。また航空戦艦『日向』『伊勢』で編成された対潜水艦戦部隊を投入した。この後に来るであろう連合軍の大反攻をにらみつつ日本の戦いは続いていく―。シリーズ第8弾。

欧州ではA情報が流用されてドイツ軍はソ連で地歩を固めたものの、北アフリカで史実通り連合軍の上陸を許し、均衡が破れつつあるようです。
一方、太平洋戦線では前巻にて連合軍の攻勢挫折により小康状態に入るのですが、連合軍(アメリカ軍)が選択したのは、通商破壊作戦による時間稼ぎ。
しかも北はアリューシャンキスカアッツ島)から南はトラックからインドネシアまでの広い範囲で南北挟撃で日本は困った状態。
ちょうど1943年の終わりから1944年にかけての戦況が書かれるのですが、実際に史実でも東南アジアから本土にかけて通商破壊によって日本の海上輸送網はずたずたにされ、随分苦しんだのは周知の通り。
そこはA情報を生かした効果的な防衛と反撃を行うものの被害は出てしまうのですが、連合軍が偽装漁船による群狼作戦もどきをすれば日本軍は波号潜水艦による探索を実施。なかなか緊迫した場面でした。
A情報で得た技術によって制式化した高高度偵察機・祥雲による大胆な偵察の敢行とあずみ丸乗り組みメンバーが未来技術を駆使した敵信傍受を行って、敵の意図を探る。まったくもって史実では顧みられなかった分野ですなぁ。
その結果、アメリカ軍によるキスカアッツ島奪取作戦と日本軍による「ケ号作戦を更にスケールを大きくした」作戦が発動されます。
先遣隊にして陽動である航空戦艦『日向』『伊勢』で編成された対潜水艦戦部隊が投入され、早速それに食いついた米軍。その間に主作戦であるキスカ、アッツ撤収が行われる。
史実のケ号作戦は指揮官の判断に天佑神助が味方して成功を収めましたが、本作で描かれていたのは丹念な準備の賜物。
戦闘描写自体は相変わらずあっさりしていたけど、戦略的には意味のある撤収作戦として描かれました。個人的にはキスカ撤収作戦を指揮した木村昌福少将が登場したのが嬉しかったです。