まいん 『食い詰め傭兵の幻想奇譚13』

内容(「BOOK」データベースより)

さすがにそろそろ、ロレンの所属していた傭兵団の謎多き団長に会うべきであろうと、北行きを進言するラピス。気乗りしないロレンだったが、そこにギルドから緊急依頼が舞い込み、団長が目撃されていたユスティニア帝国へと赴くことになり―。これは、新米冒険者に転職した、凄腕の元傭兵の冒険譚である。

前巻でロレンの育ての親である傭兵団長が生きていて、北方にあるユスティニア帝国にいるという情報が入りました。
以前封印されていた扉の開錠のためにロレンが口にしたキーワード。それは幼い頃から団長に聞かされていた話というのですが、知識の神官を自称するラピスだけじゃなく、長い寿命を持つ神祖でさえ聞いたことがないという。
当の団長に会ってみたいものの、帝国に行くには大陸を縦断するために広大な距離が横たわっており、そう簡単に行くわけにいきません。
そんな時にギルドに舞い込んだのが緊急依頼。
北方にあるロンバード王国が国中にあるギルド15か所を潰したという信じられない情報。
世界を股にかける組織のギルドとしてはそのような仕打ちを受けて座して待てるわけがなく、ただちに報復処置を取るのですが、かといって一国を相手に戦争するわけにもいかなく。
そこで王国と戦争状態にある帝国に肩入れして、冒険者を派遣させることになったのです。
とはいえ、カッファは遠距離にあるためにとりあえず派遣されることになったのはロレンのパーティのみ。
なにやら王国には黒い鎧男が見られたという噂があり、今までの数々の因縁を晴らせるかもしれません。
帝国に行くにはギルドからの特別便を利用するところをラピスの伝手で近道を使うことにしたのですが、それは魔王領を通ること。しかも送迎の為に途中で待ち合わせたのはエンシェントドラゴンのエメリー。
エメリーはかつてブレスで魔王城の一部を破壊したために賠償金を払う羽目になり、借金返済の一部としてロレンたちを魔王城まで乗せることになったのです。*1
さすがにエンシェントドラゴンの速度はすさまじく、あっという間に魔王城にまで到達。エメリーの悪戯心かわかりませんが、ロレンたちは城のバルコニーに放り投げ出されてしまうのですが、勢いのあまりにガラスを破って入った先は大魔王の浴室(入浴中)なのでした。


前半の見どころは大魔王への唐突な拝謁と会談。可憐な見た目ながら、ロレンをして敵わないと思わせる強大な実力の持ち主であるメイドたちに世話されるロレンといったところでしょうか。
たとえ大魔王の前でも調子を崩さず、鋼の精神を保ったあたりが只者じゃありません。
実際のところ、欲に溺れた方が悪い結果になったかもしれないので、そういう意味ではロレンは思慮深いですね。
そして北方に向かう道中では誰もが会いたくなかった色欲の邪神・ルクセリアと遭遇してしまい、宿を騒がせたこともあって、おまけ(ラピスにちょっかい出そうとしてルクセリアに提供された哀れな男たち)つきで引き連れていく羽目に。
こいつが登場するだけで変な雰囲気になるからホント勘弁してほしい(笑)

なんだかんだいって無事(?)に最前線に到着。
組織だった戦闘などできない冒険者一行は遊撃隊に加わり、夜間の遭遇戦に巻き込まれますが、そこは死の王の力が混じり始めたロレンの無双状態。
その間にグーラとルクセリアのつまみ食いもあったので、王国の兵隊は悲惨としか言いようがありません。
しかし、王国には切り札として、邪神の中でも最大に攻撃力を持つ憤怒の邪神レイス・サターニアがいました。
戦いに加わらずに様子を見ていたラピスの機転がなければ危うかったでしょう。
強大な炎を扱う邪神レイス相手に奮闘するロレンが文字通り熱いです。
そしてやっぱり無茶をしてしまうのですが。

最後はいつものように病室で目覚めるのですが、男であるクラースがいたのが珍しかったです。
移動に時間がかかったせいか、後から戦線に来たために命拾いしたクラースのパーティは幸運でした。
ロレンとレイスの激闘の間、敵味方100人を超える人数が死に絶え、グーラとルクセリアは重傷。*2
なんだかんだで一人だけ無傷だったために後始末に奔走するラピスというのもいつも通りですね。
最近の巻では無難にまとまっているものの、内容的にはマンネリ気味だったので、今回のように課題が持ち越しとなったのは楽しみではあります。
団長と再会してロレンの出生の謎が判明するのか。黒鎧の男が支配した(?)王国や敵方にまわった邪神との決着などですね。

*1:同じく多額の借金を背負うロレンとの共感というか勘違いもあったり。

*2:死んでもおかしくないくらいほどだったのに生き残ったのはさすが邪神。