横山信義 『蒼洋の城塞2-豪州本土強襲』

蒼洋の城塞2-豪州本土強襲 (C★NOVELS)

蒼洋の城塞2-豪州本土強襲 (C★NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

珊瑚海海戦に勝利した日本軍はポート・モレスビーを占領。M0作戦の完遂という真珠湾以来の大戦果を上げた。その喜びも束の間、米機動部隊が日本占領下のツラギを攻撃。さらにガダルカナル島では米軍の飛行場が急ピッチで建設されていた。連合艦隊司令長官山本五十六はM1作戦の中止を決定、標的をガダルカナル飛行場とソロモン諸島に変更する。だがその最中、米国はモレスビーへの輸送船団を強襲。対する日本軍は「蒼龍」「飛龍」ら機動部隊でケアンズタウンズビルの飛行場を攻撃し、米補給線の寸断を狙うのだが―。

1巻にて珊瑚海海戦を史実以上に勝利を収めて、ポート・モレスビーの占領も果たした日本軍。
戦略的にもアメリカ・オーストラリア分断の楔となるMO作戦の成功です。
しかし、すぐの間にラバウルとの中間にあるツラギが占領されただけでなく、偵察の結果、ガダルカナル島には急ピッチで飛行場が建設されていたことがわかります。
ここにきて、アメリカ軍はオーストラリア救援に本腰を入れてきたことが判明したことにより、連合艦隊司令長官山本五十六はM1作戦の中止を決定します。
数少ない空母を用いてポート・モレスビーへの輸送船団を襲う米軍。
その対応に南雲提督率いる航空艦隊を投入する日本軍。
いっこうに基地化が進まないモレスビーの安全を期すために対岸のケアンズタウンズビルまで襲います。
また、1巻でも活躍した呂号潜水艦でオーストラリアへの輸送船団を襲うというのも本作ならではです。
ここにおいて、日米の激突はソロモン海からオーストラリア北部沿岸まで拡大していったのでした。


史実でいえばミッドウェー海戦の直前にあたるのですが、日本はドーリットルによる奇襲を退けた後に空母を撃沈したこと、珊瑚海海戦の完全勝利で、空母のバランスが史実以上に優勢となっています。
それゆえに6(2は軽空母)対3で始まった航空戦では終始日本軍有利で推移しました。
もちろん、損害がありましたが。
本作での南雲提督は航空専門家ではないので、部下の意見を入れた上でよく吟味し、堅実に進めている印象を受けますね。
逆に言うと、横山信義氏の作品の割にはアメリカ側に不運が続くのが新鮮です。
例えば損傷を負っていたわけでもない空母が潜水艦一隻による雷撃で沈められるなど、史実での「信濃」を思い出しますね。
特に有名提督の死が続いている今後に大きく響いてきそう。
ひょっとしたら、将兵の大きな損失が終戦への伏線となるのかとも思えました。
米軍が敗北した結果、オーストラリアは中立へと傾いていくのですが、そこで待ったをかけたのがイギリス。
本国の守りを薄くしてでも、連邦保持のために強力な艦隊を派遣するところで終わりました。
次回からは日英対決がメインでしょうが、新鋭艦が抜けたことによって、大西洋およびアフリカ方面に影響が出るのかが気になりますね。