北山悠莉 『精霊幻想記14 復讐の抒情詩』

精霊幻想記 14.復讐の叙情詩 (HJ文庫)

精霊幻想記 14.復讐の叙情詩 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

プロキシア帝国城にて、初代皇帝を名乗る男から仇敵ルシウスの行方に関する情報を入手したリオ。ルシウスとの決着の刻を間近に予感しながら、リオは進路をパラディア王国へと向ける。一方その頃、ロダニアの客船からクリスティーナとフローラ―二人の王女が誘拐されていた。彼女たちが強制転移させられた先とは、奇しくもパラディア王国の森の中。幾重にも仕組まれた罠に絡め取られた王女たちの前に現れるのは、救いの手か、それとも無慈悲な刃か…。

13巻にて、プロキシア帝国の本城に侵入したリオが皇帝相手に模擬戦を行った結果、ルシウスの行方に関する情報を入手できたのですが、それはリオをおびきよせるためにレイスが考えた策の一つでした。
乗っていた魔道船が襲撃を受け、いずこかの森へと強制転移させられた王女姉妹(システィーナとフローラ)は賊が追ってがくる前に少しでもその場を離れようとしますが、慣れない森の中では苦労の連続。しまいにはフローラが毒蜘蛛に刺されてしまいます。
勇者として異世界召喚された高校生レイジは身体強化能力と神装をもって、いっぱしの冒険者として活動を始めていました。
王国の姫との知遇を得るも、彼らを利用しようと企てるレイスたちの触手が伸びていて…。
また、レイスはリオにとって大切な師であるセリアを人質に取ろうとしますが、護衛に付いていた精霊のアイシアに気づかれて逃走。
というのも、協力関係にあったレイスとルシウスですが、利用されるのを嫌がったルシウスが肝心なところで裏切ったためでした。


一度目の戦いでは重傷を負わせるも惜しいところで逃してしまった両親の仇ルシウスとの決戦。ほぼ一巻丸々その舞台作りに使われているといっていいでしょう。
Web版の内容をベースにしつつも、内容は大幅に改変されているようです。
その最たるものがWeb版ではフローラ一人だった森の中への強制転移が姉妹になっている点。
それに勇者レイジについて、転移直後からの描写があること。
前者は意図が曖昧だったWeb版に比べて、目的がはっきりしていたことや、姉妹が支えあう様子があって良かったと思います。
逆に後者は直接主人公と絡むことのない勇者にあそこまで割く必要があったのか疑問で、横道に逸れすぎている気がしました。*1


そしてクライマックスであるルシウスとの決戦。
王女姉妹を庇いながら戦わなければならないハンデを背負い、いくつも傷を負うほど不利な状況から派手な逆転劇とうまく展開していったと思います。
リオとの戦いで失った左目と左手をレイスによって補ったルシウス。
それは強力な能力が付与されており、初見殺しと言っていいほど。
実際に冒険者として名をはせていたレイジを圧倒しました。
しかしリオには通用せず、姉妹を護るというハンデがあって途中まで苦しめた程度。
もしも足手まといがなければそんなに苦戦しなかったことが予想されます。
そういう意味ではルシウスがもはや歴戦の傭兵団長というより、卑怯な手段でしか戦えないチンピラ臭がしてしまいました。*2
それもこれも主人公が強すぎる弊害ですかね。


両親の復讐という最大の目的を達した後のリオが何を道しるべとして生きていくのか?
異常なほどの戦闘を間近で見てしまったクリスティーナの心情。
最後にやらかしたヘボ勇者・坂田弘明によって巻き起こるであろうトラブル?
そのあたりが今後気になるところですね。

*1:わざわざレイジを勇者覚醒させて、リオにぶつけるつもりなのか?

*2:筋肉ムキムキで渋いアラフォー中年をイメージしていたのが、挿絵ではアラサーくらいのチャラ男に見えてしまった